朝起きて、昼からのサッカーを見に国立競技場へ。
気分を害した後、九段下は武道館へと。
九段下へ着くと、ちょうど開場前と言う事もあり結構な人の数。
チケットを受け取る為、最初の門のところで待ち合わせて、無事にチケを受け取る。
座席は北東の前から5列目あたり。結構近い。アリーナ後ろより全然近い。
五十嵐の横顔がたまにみえる、ドラムの中畑の横顔がほぼ完璧に見えるぐらいの位置。
残念なことにキタダマキは照明(逆光)にかき消され、まったく見えませんでした。
アリーナが完璧に見渡せる位置で、バンドから客席がどう見えるのかが良く分かった。
好きなバンドの解散ライブなんて、行った事無いな、なんて思いながら、ミッシェルやペンパルズやCHOKOや、そこそこ行っている事に気付いたりした。
ライブはきこえるかい で始まり、無効の日と続く
「次は生活だな」となんとなく思ったら、本当に生活だった。
神のカルマ、I・N・Mと妥協の無いセットリストが続く。
数曲が過ぎて、アコギに持ち替えて弾き語り。
センチメンタル、明日を落としても。
あのベースの寂しいフレーズが欲しかった。
途中、テレキャスターに持ち変えた五十嵐が「終わっちまうぞ」と叫んで、パープルムカデを始めた。
なんかしらないけど、いきなり泣きそうになってしまって必死に抑えた。
解散ライブで泣くなんて恥ずかしすぎるだろ。
でも不思議と、曲が進んでいくと高ぶった感情が治まっていく。
それにしても、いつにもまして客席が大人しい。
天才とか、普段もりあがるようなところもまばらで、それだけ普段ライブに行きなれて居ない人が多かったんだろう。
個人的にアリーナをスタンディングにすれば良かった気もした。
リアルのドラムが始まって、「ああヤバい、この流れは終わりへ向かっている流れだ」と感じて、少し鼓動が早まる。
いつにもまして、ステージの温度は高い。だけど、特に最後だっていう悲壮感はない。
そのままライブが終わる。
客電もつかず、そのままアンコール。
新譜の曲が始まった。
五十嵐は「ロックと言うフォーマットにこだわらなくても」と言っていたけど、その実あたらしい曲はロックに属すると思う。
でも、ロックはロックでもアメリカンな匂いのするロックで、個人的には「ああ、イエモンだな」なんて感じたりもした。
吉井とかぶせて考えると、少し今後の五十嵐が不安になったりもしたけど、そんな事は今は関係無いので頭から吹き消した。
でもやっぱり、syrup16gというセルフタイトルのアルバムが、一番彼らのバンドとしてのイメージから乖離している事が、逆に彼ららしい、と言うか。
どうやりくりしても、真摯にバンドと向きあうのなら終わるしか無いな、というのは良くわかった。
2回目のアンコールはShe Was Beautifulから始まった。
ハーモニクスが曲中ずっとループし続けるこの曲は、レコーディングが終わって出来上がったCDを初めて聞いたとき涙したと言うCOPYというアルバムの最初の曲だ。
淡々とした曲調の、隙間に何かを感じるこの曲の空気感は、何気ない生活の美しさと恐怖感を煽る。
そこから落堕へ。
3回目のアンコール。
もう終わりが見えてきていて、段々哀しさも増してくる。
「プレーヤーから、明日が見えるような曲を一杯書いてきたので、気が向いたらまた聞いてやって下さい」
と、曲をはじめるのを躊躇いながら言う。
「次の曲もそんな曲です」
といって始めたのは翌日。
フリースロウというインディーズ時代のCDの一曲目で、これが最後のライブで、恐らくもう数曲で終わるであろうこの段階でその歌を歌えるっていう事。
なんかいろんな感情が湧きあがってきて、この日何度目かに涙腺が刺激されたけど、やっぱりステージを横から見て彼らの演奏を聴いていると、涙も抑えられた。
五十嵐がカポを4から2にずらしているのが見えて、「ああ、もう終わるんだな」と悟った。
syrup16gとして最後に聞けるReborn。同時にsyrup16gの最後の演奏曲でもある。
生まれ変わるには、一旦終わらなければいけない。
終わりを迎えたその先に、Rebornがある。
最後の最後まで皮肉なバンドだな、と今にして思うけど、武道館の北東のD25にいた時の俺には込み上げてくるなにかしか無くて。
曲中に客電が一斉について、ああ、美しいなと。
照明効果の煙で少しもやがかかっていたけど、ステージからみる感覚で客席を見れた。
「解散するな」とか「愛してる」とか叫んでいるやつらもいたけど、そんな愚にもつかないような事言うなよ。
あの時言えたのは「ありがとう」って言葉だけだと思う。
Rebornが終わって、三人が客席に挨拶をしてくれた。
その後、中畑が最後に叫ぶように「ありがとう」と言ってライブが終わった。
いつものライブ後より少しだけ多い疲労感があるだけで、客席もそれほど悲壮感は無い。
それはきっと、お涙頂戴でもなんでもなく、純粋に良いライブだったからなんだろう。
プレーヤーからいつでも明日が見える。そんな曲を沢山作ってくれたバンドだった。
そんな彼らの最後のライブは、「ありがとう」という言葉が似合うライブだった。