2006年03月06日(月)  夢のない話。
 
『英語を話せると、10億人と話せる』
 
……。
……。
 
「何見てるの?」
「いや、あの中吊り広告」
 
彼女と電車の中。無口な彼女は無駄な話を好まない。無駄な話しか好まない僕と正反対なので、僕は彼女といっぱい無駄話がしたい。でも彼女は饒舌な男を嫌うので、僕はこうやって電車の中であらゆる中吊り広告を静かに読んでいるのである。
 
「英会話の?」
「そう。英語を話せると10億人と話せるんだってさ」
「ステキじゃない」
「でもさ、日本語話せても1億人と話す必要性すらないのに10億って」
「あぁぁ」
「どうしたの?」
「またあなたは夢のない話をする」
 
彼女は小さく溜息を吐いて、僕の肩に頭を乗せる。夢のない話。電車が止まる。英語を話せると10億人と話せるかもしれないけれど。立ち上がった彼女は僕の手を引いて都会の波へといざなった。
 

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