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| 2006年02月22日(水) 独り占め。 |
| 彼女の部屋ではタバコが吸えないので毎日ベランダで吸っているのだが、ベランダは寒くてしょうがないので、よっぽどタバコが吸いたい時じゃないと吸わないようにしている。でもこうやって暮らしていると「よっぽどタバコが吸いたい時」なんてあまり訪れなくて、毎日僕がタバコを吸っているのは「軽くタバコが吸いたい時」なんだなぁと思ったところで禁煙できるわけでもなく、日々は無情に流れていき、肺は目も当てられぬほど黒く染まっていくのである。 で、早朝のベランダ。僕はタバコを吸っていて、彼女は鏡に向かって化粧をしている。起床する時間も仕事に出る時間も彼女と同じだが、僕は化粧をしなくていいので、彼女の化粧の時間の分だけ喫煙できる余裕が生じることに彼女は毎日怒っている。小言を言いながら化粧をしている。マンションの下の通りには通学途中の中学生が何十人も列をなして歩いている。 「ねぇ。ここに立ってさ、下を見下ろしてさ、制服姿の中学生が通っているのを眺めてるのってさ」 「何よ。忙しいのに。わぁ。今日間に合うかしら」 「こうやってさ、直立不動でさ、下の中学生を見下ろしてるとさ」 「何よ同じことばっかり。何? 何が言いたいの?」 「大行進を見下ろしている金正日みたいな気分になっているんだよ俺は」 「知らないわよ。あーもう真剣に聴いて損した!」 朝陽が注ぐベランダで、マイルドセブンの紫煙が揺れる。 一重まぶたの独裁者、階下の行進眺めつつ、君の怒りを独り占め。 |
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