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| 2004年08月12日(木) 宣告。 |
| *めけめけ@DC【一番痛いテキストを斬れ!】優勝作品。 風呂上り、僕は首にタオルを巻いたまま冷蔵庫を開け缶ビールを取り、リビングで普遍的且つ通俗的な風呂上りの男性を演出している最中、彼女は奥の部屋のソファーに横になり、バラエティー番組を見ながら携帯片手に粗雑的且つ低俗的な会話をしていた。 彼女が電話を始めると1時間は終わらない。立て板に水の如く、だらだらと滞りなくその能弁は続く。僕は奥の部屋へは行かず、リビングのテーブルに腰掛け、缶ビール片手に無意味で無価値な会話に聞くともなく耳を澄ませる。 「そうなんだー。私もビックリしてるもーん」 この歳の女性は何にだって驚く。何に対しても驚愕することで感受性が豊かだということをアピールしている。 「えー。それってチョームカつかない? ふざけんなーみたいな」 僕は彼女が田舎から東京へ出てきて変な言葉に感化されてしまったことがチョームカつく。 「ワハハ。サイテー。なにそれー。バレバレー」 笑。最低。何其れ。露見。彼女の言葉を意味もなく文字にしてみる。 全くもって無意味! 不可解! ビール超うめぇ! 「ほんとバレバレだよねー。指定着メロとか設定しちゃったりして」 いったい何の話をしているんだ。脈絡の無い会話は、聞いていて楽しくもあり、不安でもある。 「うん。私も彼氏の着メロ指定にしてるよー」 「えとねー。大きなのっぽの古……古……」 「そうそう古時計!」 どういう種類の記憶の欠如なんだ。どこでどう言葉を区切って学習してるんだ。 「だけどさー、ホントに好きなのー? なんか勢いっぽくない? そういうの」 どうやら恋愛に関する話らしい。イラク情勢の進展よりも隣のカップルの進展具合が気になるらしい。 「だって1回だけでしょー。1回寝ただけでわかるわけないじゃん」 寝ただけって。まぁ。赤面。今時の若いコは、なんて。 「私、彼氏といっぱいエッチしてるけど、まだ何考えてるかわかんないとこあるもん。そんな1回だけじゃわかんないよー」 何を言っているんだ。赤面。何突っ込んだ会話してんだ。少し、ドキドキしてきました。 「えー? 先週のバレンタイン? うん。会えなかったの。彼氏仕事終わるの遅くってー」 ドキドキ。 「えー。そうなんだー。どうりでー」 何を納得してるんだ。何が道理なんだ。やっぱりバレンタインは彼女と過ごすべきだよなぁ。あの時はどうしても断れなくて会えなかったんだもんなぁ。しょうがないよなぁ。 「ウソ! 手作り? すごーい。私コンビニのチョコだったぁ。やっぱ3年も付き合うとね、何もかもコンビニで済ませちゃうの」 そう言ってソファーに寝転びながら彼女はリビングの僕の方を見る。僕が苦い顔をしているのはビールのせいだけじゃなく、 「最近なんて晩ご飯もコンビニで済ませちゃう」 こういう現実に基づいている。 「で、これからどうすんの?」 彼女は足で起用にリモコンを寄せてテレビのチャンネルを替えながら話を続ける。3年付き合って、コンビニのチョコと晩ご飯。そして下らない長電話にビールを飲んで耐える日常。これからどうすんの? 僕だったら、別れのセリフを考える。キミへの愛は情緒ではなくて、幻想だった。とかね。 「へぇ、諦めないんだぁ。こういう時の女って強くて怖いもんねぇ。だけど私も諦めないかな。また1からやり直しとか面倒臭いしね」 妥協なのか。僕は妥協の産物なのか。なんだか面倒臭いから僕でいいってことなのか。 「ちょっと待っててね。彼氏に聞いてくるー」 そう言って彼女は奥の部屋から僕を呼ぶ。そして「ねぇ、これからどうすんの?」と先ほど電話先の相手に投げ掛けた同じ質問をする。彼女が僕の方へ伸ばした腕の先には、僕の、携帯。 「おいっ! これっ! 俺の……!」 「うん。あなたのよ。あなたがシャワー浴びてるとき携帯鳴って『ミカン』ってワケわかんない名前が表示されたから電話取ってみたの」 「か、勝手に電話とるなよ!」 「だってミカンとお話してみたかったし」 「なっ……!」 「だけどミカンじゃなかったの。あなたの彼女って名乗る女だったわ。結構話が合っちゃって」 彼女はその憎悪を込めた瞳を除いては、無邪気に笑っていた。そして言い訳の許されない最後の宣告をした。 「で、これからどうすんの?」 |
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