2003年11月05日(水)  スタート切った。
   
真新しい白衣に身を包み、肩の力が抜けぬままナースステーションに入る。
 
「今日からこの病院に勤務することになったヨシミです。よろしくお願いします」
 
都内のとある病院。今日から僕はここで働くことになった。今まで主任と呼ばれていた僕もここでは全く関係ない。ゼロからのスタート。こっちに引っ越してきてからもう何度スタートをきったかわからないけど、これが正真正銘のスタートになるような気がする。
 
7年間の看護師としての経験は、仕事を覚えることに関していえば、決して損にはならない。新人を担当する看護婦に仕事の流れを教わりながら「ここはこうした方がいいかもしれない」と既に新しい仕事を自分なりにアレンジしようとしている。
 
だけど僕はこの病院のことは何も知らない。過去の誇りなど切り捨てて、新人らしく謙虚に振舞わなければいけない。新人は新人らしく。僕の演技の見せどころだ。
 
「あなたはきっとどこに行ってもその場所で適応できるわ」
 
以前の病院の婦長は僕の破れた白衣のズボンを縫いながらそう言った。簡単なことだ。適応したければ不必要なプライドを捨てればいいのだ。誰にも怒らず不平を言わず不満を飲み込み笑顔を振舞う。たったこれだけで新しい場所にも難なく適応できる。
 
「精一杯頑張りますのでよろしくお願いします」
 
ナースステーションで深々と頭を下げる。ここではどんな出来事が、時には目の前に立ち塞がり、時には身を潜めて、待っているのだろうか。頭を下げた僕の口元はニヤリと微笑んでいる。
 

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