a hermitage
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なぜだか 二人で 荒野にいた。
西部劇の世界。
砂ぼこりが舞う中 二人で あてもなく 歩き続けていた。
と ぽつんと 一軒の 古びた 居酒屋が。
スイングドアを押して 中に入ると 一人の 無愛想な老人に じろりと にらまれた。
老人は ダンナに たずねた。
「にーちゃん、 なんの仕事してんだい?」
ダンナは ぺらぺらと 早口言葉のように 「本業はコレコレで、 バイトが アレと コレと ソレと それから コレも、 こんなのも あんなのも それから それから・・・」
老人は 呆れた顔で
「そんなに仕事して 体に悪いだろうに・・。
どうして そんな無茶な仕事を?」
ため息をつくダンナ。
「あぁ、 疲れてますよ、 くたくたです。
けど 仕方ないんです、 多額の借金がありますから・・」
横で おとなしくしていた私が いきなし 反応
「借金〜?」
またか! どーゆーことだ!
と 責め立てる。
ダンナは 静かな口調であやまる。
もう2度としないから、 一生懸命 仕事するから・・。
けっ! 信じられない! いくらバイトしたって また おんなじことだよっ! いっそのこと・・・
私が 言ってはいけない言葉を 言ったとたん
ダンナは ふっ と いなくなった。
血の気が引いた。
やばい やばい すぐ 探さなくちゃ。
ダンナの 携帯番号は??? どうしても 思い出せない。
やっとのことで メモを見つけ出す。
が 数字の 上半分が消えている。
「6」なのか 「0」なのか わからない! わからない!
そんな 消えかかったたくさんのメモを 繋ぎ合わせて やっと 番号がわかった。
早く 電話しなくちゃ!
けれど なんどダイヤルしても 途中で 押し間違える。 あせれば あせるほど 間違える。
そうだ! 誰か メモリか 着歴に ダンナの番号 残ってる人 いない? それでかければ 間違うことない!
ダンナの友達や 会社の人 いろんな人に たずねて回る。
みんな
「あいつが 仕事休むなんて珍しいから 心配して さっきからずっと 電話も メールも 送り続けてるんだよ」
と 言ってくれるのに
誰の携帯のメモリにも ダンナの番号が ない。
リダイヤルさせてくれ と お願いしても なぜか 誰の携帯にも 発信歴が 残っていない。
どうして? 早く電話しなきゃ! 早く! 早く!
震えながら 泣き叫びながら 番号を 探し続けていると 天から 静かな声が 聞こえてきた
「もう あの携帯には 電話をかけることはできないんですよ・・・」
あの携帯は 今も あそこに 沈んでいるんだろうか。。。
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