「"桃色片思い"って、何色なの?」と訊いて来たので、 「桃色でしょ」と答えた。
すると、「桃色って、何色?」と訊いて来たので、これは厄介だと思った。 そういえば、私はまだ、ヘビゴンザレス(仮)に色のことを教えてなかったのだ。 困った私は、苦し紛れに、「も、桃の色」とだけ。 しかし、ヘビゴンザレス(仮)には、 桃も食べさせたことがなかったので、これまた説明に一苦労。
"桃でだめなら!"と、ありとあらゆる"桃色"を引き合いに出してみたのだが、 どれもこれも、ヘビゴンザレス(仮)を納得させるには至らなかった。 もう教えるのも無理かと思い、説明虚しくなって来たそのとき……。
「生ハム?」 ヘビゴンザレス(仮)が訊いて来た。 咄嗟のことに黙ってしまう私。 しかし、ヘビゴンザレス(仮)は、なおも訊いて来る。
「生ハムでしょ?」 「ああ……うん」
我に返った私は、頭のなかで思い出してみる。 生ハムの色艶は少し濃いが、確かに"桃色"と呼べなくもない。 肯定した私の返事を聞くや否やヘビゴンザレス(仮)は言い放った。
「じゃあっ、じゃあ、これは、ろまんちっくな色なんだ。ろまんちっくな片想いだ」 そして、「桃色片想い」を大声で歌い出した。
……最近、ヘビゴンザレス(仮)が、すごく大人になったような気がする。 手に負えないような気さえする。 ヘビゴンザレス(仮)は、私と彼氏以外の人間と、直接会ったことはないはずなのに、 何処で"ロマンチック"とか"生ハム"とか、そういう単語を覚えて来るんだろう。 やっぱり、テレビかなあ? テレビとかのメディア媒体でなく、私も教えてないとしたら、彼氏ってことになるんだろうけど(その可能性は強いけど)。
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