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殴られてたよ



「なんでお前の事、殴るかわかるか。
お前は生きているからだ。
この教え方は何と同じか知っているか?
犬と同じなんだよ。
他の奴には殴らないよ。
死んでいるやつに誰が殴るかよ。」

「オレのやっている事、本社の奴に言ってみろ。
お前の家に火をつけてやるからな。」

「自分の店だと思って働け。
そしたら休みなんかいらないだろ。
休みなんかないんだ。
休みはな、もらう物じゃなく
奪う物なんだ。奪えない間は休むな。」

「徹夜しろ。なんで徹夜しないんだ?」

「なんでオレはこの年になっても動けるかわかるか?
若い時から、寝る暇もなくとことん動いていたからだよ。」

「田村、本社の奴によ、
『いったい何人の社員を辞めさせれば気が済むんだ。』
なんて言われちまったよ。オレは言ってやったよ 。
『辞める社員は根性が無いだけだ』って
『オレのやり方は間違っていない』って。
それでも『あなたの下の社員は辞め過ぎです。どうしてくれるんですか』
って言われたからよ
オレはこんな会社やってられなくなったよ。
オレの方から辞めてやるよ。」

そして、エリアマネージャーはオレより先に会社を辞めた。
そんな武蔵野地区、吉祥寺、国分寺、国立、立川を受け持つ
エリアマネージャーがいた。当時で50歳位の人だった。

そのエリアマネージャーは筋金入りの元ヤクザだった。
背中を見ればわかった。
その人はヤクザから足を洗い、外食産業に入り
しばらくして新宿店の店長になった。
それこそ一日も休まずに一番忙しい新宿店を切り盛りしながら
新宿店を更に大きくして、売り上げから何から数々の新記録を
打ち出してきた人だった。
某飲食店の名前をある程度有名にした立役者の一人だった。
店長時代、何度も本社から賞状をもらった人だった。
その人が店長からエリアマネージャーになり
武蔵野地区を受け持つ事に なった。

オレはその人の下で吉祥寺店の店長になっていた。

同じエリアの他の社員の人達が次々と辞めていく中
オレは辞めていなかった。
なぜなら
正直、メチャクチャきつかったけど
「店」という空間が好きだった。
「いらっしゃいませ!」「ありがとうございました!」が好きだった。
料理が好きだった。
当時は飲食店は自分の天職だとも思っていた・・・・。

「お前がだらしないから、みんな辞めていくんだ」と言われた事もあった。
「今日は吉祥寺ではお前が休みの日かもしれないが、
他の店を見に行け。社員が辞めちまって、
今アルバイトだけでやっている店 なんだぞ。
社員のお前が面倒見なくて誰がみるんだ。」
久しぶりの休みの日には、いつもこんな電話がかかってくるのが常だった。


筋金入りのエリアマネージャーが会社を辞めてから
新たにエリアマネージャーになった人は
その筋金入りのエリアマネージャーに育てられた人だった。
その人は暴力こそ無かったものの
基本的に筋金入りのエリアマネージャーと やり方は
一緒だった。休みがなかった。

自分がライブの日は午前中は店に出て。ライブの時間は店を
アルバイトの子達に任せ、ライブが終わってから
また店に戻ってレジ締めをする。を繰り返していた。

まだ筋金入りのエリアマネージャーがいた頃、こんな事があった。
どうしても自分のLIVEの日とアルバイトの子達の都合がつかず
筋金入りのエリアマネージャーに
「この日の夜、自分のライヴがあるんです。夜はお休みを
いただきたいのです。でもこの日は、どうしても人手が足りないのです。
マネージャーお願いがあります。
この日はお店に出ていただけますでしょうか?」と
お願いした事があった。

そしたらその瞬間「いまここで辞表書いてLIVEに行くか、
そのままLIVEに行かないかどっちかにしろ」
と顔をぶん殴られて言われた。
そしてオレは泣きながら答えた。殴られて、口からは血が出ていた。
「なんでLIVEをやっちゃいけないんですか。
音楽は辞めません!。辞表も書きません!!LIVEに行かせてください!」と
そしたら筋金入りのエリアマネージャーは初めて笑って言ってくれた。
「行ってこい。」と「LIVE頑張ってこい!」と「店はオレが出てやる」と。


エリアマネージャーが変わってからも
LIVEをやり、飲食店で働きを続けていた。
吉祥寺店は自分がいなくても
アルバイトの子達でよっぽど忙しくない限り
切り盛り出来るように店を作った。みんないい子達だった。
そんな吉祥寺店に、そこで働くアルバイトの子達に
メチャクチャオレは愛着がわいていた。頑張れた。
オレも当時は若かった。何でもやれた。まだ26歳だった。

だが26歳の11月
オレは体を壊した。初めて辞表を出した。
その時、1月までは辞めないでくれと言われた。
そして翌年の1月、正式に会社を辞めた。

新たな職探しを始めた。

絵を描くのが好き。
チラシを作るのが好き。
デザインに興味がある。

そんな時、今の会社の求人広告を見た。
そして面接を受けた。
そして受かった。
そして27歳の4月、今の会社に入った。

気がつけば、今34歳。
今の会社に入って7年が過ぎている。
未だに上司恐怖症が消えていない。
これはオレの問題だ。

自分で言うのも変だが
無鉄砲で自由奔放で人との会話は上手くしゃべれず
『イエ〜イ』とか『ワオ』で会話していて口下手で
でも毎日が本当に楽しくて、こんなに楽しくて良いんだろうかと
思っていて、そのまんまで社会に出た。
そしたらいきなり
暴力を振るい、今までの自分を頭ごなしに全否定し て
犬と同じ教育方針だと言う上司が現れた時からオレは
何か肝心な部分が、ものすごく臆病者になってしまった
ような気がする。

あの頃に比べりゃ
今は楽ちんとでも言うのかい?
今はどうだい?どうだというんだい??
オレ、どんどん駄目になっていないか?

大学を卒業してから約10年。
オレは将来の事なんか何にも考えずに過ごしてきたんだと
最近つくづく思う。

LIVEが全てで、そこが全部で、それに疑いの余地も何もなかった。
過去も現在も未来も関係なくLIVEが全てだった・・・・。

こんな事、書いていったい何になる。
だから何だよって話だ。

自分で選んだ道のくせに
出来る事なら
この10年間を消しゴムで消したがっている。

きれいさっぱり消して
これからを
もう一度やりなおしたがっている。

オレは
バカなんだ。

いつまでたっても
同じところをグルグルとしているんだ。
グルグルしていても螺旋階段のように登っていければ良いが
今のオレは
明らかに登ってなんかいない。

こんな事言って、いったい何になる。
明日も仕事だ。今AM3:30だ。
もう寝なきゃ。

また明日
オレは
何かしら
叱られるんだろうか・・・。
叱られ侍になるんだろうか・・・。

しっかりしろよ。オレ。


2008年11月04日(火)

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