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あれからもう1週間が過ぎてる。 あの場にいた人達、生きてるかな。 骨抜き状態じゃないだろうな。
5月29日 高円寺ALONEで起きた事件。 「何が起こるかわからNight!」
4月中旬になって高円寺ALONEの楽屋に貼り出されていた 手描きのどでかいポスター。 「楽器はいらない。体一つで来て下さい。君はここに名前を書けるか。」 の黒文字がなにやら、面白い事が起きるんじゃないかを 思わせる字体だった。そこに 参加希望の人達がポスターに名前を連ねていた。 オレも書いた。
5月29日、当日、ドキドキとワクワクで 高円寺ALONEの扉を開けると、すでに10人程の個性が テーブルを真ん中に、輪になって、酒を飲んでいた。
PM7:30 高円寺ALONEマスター井上博之氏
「皆さんようこそいらっしゃいました! まだ全員揃っていませんが、時間になりましたので そろそろ始めたいとおもいま〜す! カンパ〜イ!!!」
しばらくは飲みながらの親睦会になるのかなと思っていたのもつかの間 スピーカーからのアナウンス
「それでは皆さん、せっかくですので自己紹介がてらに 1曲持ち唄を唄ってもらいましょう。 それでは、一番端に座っている田村さんからよろしくお願いしま〜す!」
おい、マジかよ=!!!聞いてね=よ=!!! さっき席に座ったばかりだよ=!!! ちょっとは飲んでからにしないか=!!!
時間は止まってくれなかった。
ステージの横にはYAMAHAのフォークギターが1本立っていた。 そのギターを手にとった。
「田村さん、何を唄おうか考えていても無駄ですよ」と モニターからの低い声。
う=全部見透かされている=・・
「田村さん、ちょっとステージのセンターに立って下さい。」
なんだなんだ。唄うんじゃなかったのか?
「はい、みなさん。今から照明効果について少し説明します。 ここの照明を使うと、こうなります。そしてここの照明を使うと このようになります。」
客席にいる人達が、「お〜」とか「ほ〜」とか「へ〜」とか 言いながら、井上博之氏の照明の実演に見入っていた。
「こうやって、LIVEはステージに立つ人と 音と照明で命が吹き込まれていくのです。 表現者は照明を意識するアンテナを持ってください。 わかりましたか〜。 はい、田村さんモデルありがとうございました。 ではお待たせしました。唄ってくださ〜い。」
うを〜。 「涙よ」を唄った。 足がガクガクだった。 打ちのめされた。
唄い終わった後、席に戻り、落ち込んだ。 全く唄えなかった。
次次と参加者が持ち唄を1曲、唄い出す。 芝居があり、それぞれの人達の曲、物語に照明が彩られた。
高円寺ALONEは音もいい。 それに、照明が生きている。
そんな事思いながら、酒飲みながら、さっきの自分の「涙よ」に 落ち込みながら、酒を飲み、参加者全員、持ち唄を1曲ずつ唄い終わった。
と思いきや、
井上博之氏が突然、ステージに立った。 ハリケーンのような立ち方で、ギターを手にして ギターをかきむしり始めた。
うお=!!!!!!!!!!!!!!!!
参加者全員、歓声を上げ、高円寺ALONEが渦を巻き 井上博之氏の「転身ブルース」が放たれた。
井上博之氏は今年の1月、高円寺ALONEを開店してから LIVEをやっていない。人前で唄っていない。ステージに立っていない。 命がけで創り上げた、高円寺ALONE。 命がけで挑むとき どちらか選ぶという事はどちらかを捨てる事。 井上博之氏はLIVEハウスを経営しながらステージに立つ事を 堅くなに、拒否していた。 だが、毎日毎日自分のステージに立っていたのだ。 高円寺ALONEのステージの向かいにある PA卓、調照機のある場所で。 表現者の世界を正面から体で受け止め、 その表現者の世界を引きだすように、音と照明と表現者に全神経を注いで。
高円寺ALONEは一日の出演者が2組から3組だ。 それは、敢えてそうしているのだ。 2組3組のそれぞれの30分のステージを創りあげるのに 井上博之氏は1時間以上のワンマンLIVEを体はってやっているのだ。
安直な音は出さない。照明はやらない。全神経注いでやっているのだ。 井上博之氏の立っている場所が実はステージのオレらが唄う高さより 1センチ高く創られているのを知っている。
その井上博之氏のステージで、いつも 井上博之氏は自分のステージに立って 自分の世界を昇華させていたのだ。
なに一つ、自分が唄うたいである事を 忘れているわけもなく、それどころか いつでも行けるように、精神を昇華させていた。
今まで聞いた事のないような 「転身ブルース」が放たれた。
凄みがあった。 恐いくらい凄みのある井上博之氏の「転身ブルース」だった。 自由だった。恐いくらい自由だった。自由だった。
参加者が唄った自分の持ち曲のどれよりも 凄かった。
みんな、井上博之氏に負けた瞬間だった。
オレ、何やってンだよ!
興奮さめやらぬうちに、お刺身が運ばれてきた。
さぁ、ここからしばらくは親睦を深める飲み会になるのかな〜。 と、思いきや。
スピーカーからのアナウンス 低い声で
「それでは皆さん、お待たせ致しました。 自分と向き合う時間です。 今回の企画のメイン 即興コーナーの時間です。 決して聴いている人を意識しないで下さい。 決してあらかじめ考えられたものを出さないで下さい。 ステージに立ってその場で表現して下さい。 決して聴いている人を意識しないでやって下さい。 自分と向き合って一人でステージに立って下さい。 照明も、この明かりを付けているだけです。 余計な事を考えず、その場で即興をお願いします。 今から、クジをもって皆さんのところに回ります。 クジは楊枝です。先っぽが赤くなっているのが、 当たりクジです。当たった人からお願いしまーす。」
おいマジかよ=!!! いきなり当たってそんな事できるかよ=!!! 恐え=!!恐え=!!! 刺身食いてぇのによ=!! マジかよ=!!!
井上博之氏が楊枝を持って一人一人がクジを引き始めた。
高円寺ALONEに初めて来た女の子が当たりクジを引いた。 ギターの弾けないその子は、覚悟を決め、ステージに向かい アカペラで唄い始めた。
誰もが静かに静かに聴いていた。 その子は、途中からスイッチが入りだし 目を潤わせながら凛と唄い、みつめ そこに居た。
素直な裸の声、その子がステージから降りる時、 惜しみない拍手が沸き起こった。
これは半端じゃ出来ね~な。 出来れば自分の番、回って来て欲しくないな!
やべ=なこれ。自分の番になってあそこまで裸になれるか・・・。
わかった。考えるのやめよう。当たってからのお楽しみだ。 当たらないと何にも始まらね〜。
次次と当たりクジを引いた人達が、ステージに立ち みんな自分で音(足音)を出した瞬間から、 もう引き戻る事は出来るわけもなく とんでもなく裸の声が、オリジナルの鼓動が、 獣のような目つき、逃れられない己の悲しみ、 静寂、狂喜乱舞、凄い事になっていた。
人それぞれの個人の独自があった。 それは、奇麗だった。
緊張感に包まれた空間のなか やり終えた人達、誰もが生まれかわったように いや、ステージで生まれ変わって、 ステージを降り、惜しみない拍手。
気が付けば、オレもやりたくてやりたくてたまらなくなっていた。
何をやるかは、当たりクジ引いてから、自分と話そう。
とにかく、はやく当たりクジ引きて〜な〜。 自分とお話したいな〜。
またハズれた〜。酒飲もう。酒飲もう。酒飲もう。
気が付けば、オレとKinnちゃんが残されていた。
Kinnちゃんとジャンケンした。
オレが勝った。
電流が走り スイッチが入った。
・・・・・・・・・・・・・
覚えていない。自分が何をやったのか。 ジャンケンで勝って 客席からステージに向かうまでに、既にスイッチが入っていた。
その瞬間、自分の中に思い浮かんでいた光景をしゃべりながら 向かっていってたと思う。
ステージでブーツを脱いだ。 自分が終わったあと 客席からステージを観たら オレのブーツがステージにあった時 ブーツを脱いでやっていた事を知った。
あっという間だった。 どんどん、言葉が溢れ出て来た。 何を唄ったか、思い出せない程、瞬間瞬間 針だった。
あっという間だった。
やり終えた後、 ステージ降りる時
スピーカーから低い声で
「はい、田村さんありがとうございました〜。 即興でやるのは良いんですけど、時間オーバーで〜す。」
えっ!!オレそんな長くやってたのか=??!!??!!
ステージから降りた後、 急に恥ずかしくなったのはなぜだろうか。
そして、最後Kinnちゃん登場。
髭ボーボー、髪の毛バッサバサ。 聴き取れない声で何かわけわかんない事を言いながら ギター弾きながら、ずっとずっと何かを繰り返し繰り返し それが長くて、永遠やるんじゃないかくらい、繰り返し繰り返し 何かわけわからない事をささやきながら、ギター弾き弾き だんだんオレもハートが踊りだし、
思わず、ステージに上りピアノの椅子を叩き始めた。 またどこからか、長身な男がやってきて、ステージで踊りだし、 またどこからか、かわい子ちゃんがピアノを弾きはじめ、 オレはアフリカのジャングルの原住民の祭りを思い浮かべてた。
だいぶ、時間が過ぎていたように思う。 スピーカーから低い声で 「はい〜そろそろ、ステージから降りてくださ〜い。 ここからはKinnが一人で最後をしめくくりま〜す。」
獣のようになっていた、長身とかわい子ちゃんとオレは その時ばかりは 飼育係りのお兄さんに、調教され、たしなめられた 小動物のように素直に自分の席に戻った。
そこからのKinnちゃんが、これまた気狂いで その時のKinnちゃんのステージの姿が、今もまだ脳裏に焼き付いている。
高円寺ALONE企画 「何が起こるかわからNight!」
とんでもなく楽しかった。 えらい事になっていた。
また、やる時は また、挑戦しにいきたい。
あんな事を 酒飲みながら
緊張感 張りつめて
一人一人が真剣にステージに向かえる
高円寺ALONEの空間って凄い。
「何が起こるかわからNight!」
あの日、クジが当たってスイッチ入った時、 自分の中にぶっ壊れた魂を観た。
明日、渋谷アピア
待ってろよ。
骨抜きになったオレのクジ
当ててやる。
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