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「海がきこえる」の季節です - 2004年06月24日(木)

夏になると必ず1度は見るアニメがある。
スタジオジブリ制作、氷室冴子・原作、
望月智充・監督の「海がきこえる」だ。
この作品はスタジオジブリが若い才能を育てようと、
宮崎駿や高畑勲らを起用せずに作ったもので、
当然のごとくヒットしなかった。
ジブリの中でも一番忘れられがちな作品だろう。
でもオレはジブリ作品の中でも、
これが一番好きなのだ。

舞台は公開された当時の90年代初期の東京。
主人公のタクは駅のホームで、
高校時代の同級生・リカコに似た人物を見かけた。
実家の高知に帰省する飛行機の中で、
タクは高校時代の思い出を反芻する。
親友との大切な時間。
学校に対する小さな反抗心。
リカコに振り回される日々。。。

特にその「リカコに振り回される」ってところが、
男にとってはすげえリアルなのだ。
ちょっとイケてる女がいて、
別に惚れたってわけじゃないんけど、
でも、なんか気になる。
で、気づいたら振り回されちゃったりして…。
ほら、誰でも経験あるじゃないですか。そういうの。
その辺が見事に描かれてるんだよね。

ところが、ジブリの総帥である宮崎駿は、
本作を見て「主人公の感情がまったく伝わってこない、
随所に引っ掛かるシーンがある」と言ったらしい。
自分は本作を何度も見てしまっているし、
原作の小説も読んでしまっているので、
その辺りが補完されてしまっているのかもしれないけれど、
宮崎駿の言うことがようわからん。
セリフはなくともキャラクターの演技で十分、
補ってるような気がするのだが。
第一、オレは一発でハマッたし。

これはあくまで個人的な感想だが、
宮崎駿が描くキャラクターのほうが感情が伝わりにくいと思う。
社会学者・宮台慎司もどこかで書いていたが、
宮崎が描く女性にはあまりリアリティを感じられないのだ。
強くて優しい、母のようなキャラクターばかりで、
「そんな女いるかよー」というくらい品行法制。
ゆえにリアリティのないキャラクターが感情を持つということになり、
どこか違和感を感じる。
唯一、リアリティと感情に違和感を感じなかったのは、
「もののけ姫」くらいではないか。
にしてもアシタカの男っぷりには多少疑問を持つが。
呪いかかったら普通泣いたりわめいたりしそうな気が…。

ま、とにかく宮崎駿は基本的に「サービスの人」なんだと思う。
童話的世界・ファンタジー世界を舞台に、
物語が転がることによってキャラクターが動き出す、
アニメーションの派手な動きでお楽しみを提供する、
そんな語り部なのだ。
いわば「ハリーポッター」は撮っても
「世界の中心で愛を叫ぶ」は撮らない、
そんな人なんだと思う。

一方、「海がきこえる」の望月智充は、
調べてみたところ、スタジオピエロ出身で、
「うる星やつら」「きまぐれ★オレンジロード」
「めぞん一刻」をやっていたことが判明した。
ようはこの人、根っからの「恋愛モノの人」なのだ。
「世界の中心で愛を叫ぶ」は撮っても、
「ハリーポッター」は撮らない、そんな人なのである。
そりゃあ宮崎駿と合わないだろう。
物語の動きでキャラターを見せていく宮崎とは対照的に、
キャラクターの動きで物語を見せていく人なんだから。
第一、今にして思えば、
なんでジブリ作品をやってたのかが不明だ。

ちなみにネットで調査中、より重要な情報を知った。
望月智充は、伝説のエロアニメ「くりぃむレモン」の
絵コンテを書いていたのだ!
ああ、やっぱ好きかも、この人。



追記
ちなみに私が尊敬する富野由悠季監督は、
「ハリーポッター」や「世界の中心で愛を叫ぶ」を
やろうと思ってたのに気づいたら、
「バトルロワイヤル」を撮ってったという人です。
大好きだけど、本当、どうしようもねえ人だな(笑)


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