1時半に彼女からのコールが鳴る。
確か2時から会う事になっているのに。。。と思って出ると
そこにはいつもの光がいた。
でも不安に押しつぶされそうな自分を
なんとか奮い立てようとする変な明るさにも思えた。

約束の時間になり彼の車が来るまで私と話した。
その彼の車にはミキさんが乗っていたようだ。

その後彼女からの電話を受けたのは
それから2時間後の午後5時過ぎだった。
昼に受けた電話の光じゃなかった。

『やっぱり、駄目だったよ』
彼女のやっと出た言葉。
どんなにひどい裏切りを受けても
彼女には長い間彼を好きでいた時間があり
とてもそれをここ2日にリセットをかけることはできないのだ。

「自分の側にいてくれるなら、全てを忘れることにする」

昨日もそういうことを言っていた。
深い恋に落ちるとどんな「プライド」も粉々なのかな？
当事者じゃない自分から見たら
そんな男を許して、それでもいいから側にいて欲しいなんて
彼女の台詞を信じられなくも思った。

でも、自分に当てはめてみたら？

ヨウが急に自分の元から居なくなる事、
ちょっと考えただけでも恐くなった。
それだけで泣きそうな自分がいた。

わかるよ。光の気持ち。
痛いぐらいに伝わってくるよ。
「もう自分の一部だから」って言葉の意味もわかる。
だからって。。。渉の事を手を広げて許していいのかしら？
。。。結局彼女が広げた手を彼は取ってはくれなかったようだけど。

話を聞くと、光の3時間は拷問のような時間だったに違いない。

目の前で「俺はミキとやっていきたいと思ってる」と言われたり。
急には整理のつかない自分の気持ちを整理するために
彼女が東京に帰った後も会いたい気持ちを伝えても
彼女には「電話もダメ」と念を押されたり。
自分には駄目だといったタバコを当たり前のように吸う彼女に
差し出したzippoが光が渉にあげたプレゼントだったり。

自分が好きでしょうがない人が
他の女性（ヒト）と並んで座っている光景を見てるだけでも
胸が締め付けられるだろうに。

彼女の知らない渉が、そこには、いたのだろうに。

『もう、渉の気持ちは私には向いてないみたい。。。』
か弱い光の声が私の耳に残る。

渉の言い分はこうだ。

「一人東京で就職した時に寂しかった」
「仕事を辞めて戻ってきた時も、辛い時に側にいれなかった」
「会っていても光が自分の事を本当に好きなのか、と不安だった」

。。。なによ、それ？
思いきり子供の言い訳みたいじゃない。
寂しければ他に相手を見つけてもいいの？
光だって初めて就職して毎日忙しく働いてたのよ、
不安で寂しい思いをしていたのよ？

光は、ずっとずっと渉の事しか思ってないコなのに。
不安だったのは、貴方より彼女の方じゃないの？
寂しさを他の女で紛らわしてた貴方より、ね。。。

この先私が渉に会う事はないかもしれない。
もう私の中では幼なじみの渉、ではなく
光の彼氏の渉になってしまっていたのだから。
1発、いや、気の済むまで殴ってやりたい気持ちは
もう有り余るほどあるんだけどね（苦笑）

『長く付き合ってても別れる時は一瞬だね』
『ミキさんは渉好みの可愛いコだったよ』
『子供作っちゃえば良かったかな』

私から言わせていただければ
そんな男に光はもったいない。そう思える。
本当に一途で、でも押し付けがましくなくて
聞き分けが良すぎたのかもしれないけど
優しくて明るくて、料理も上手くて家庭的な女性。
だからわかって良かったと思うの。
今の光には酷かもしれないけど、渉みたいなのとは別れて正解！
間違っても出来ちゃった婚なんかしてみなさい、
絶対後から辛い思いをしただけなんだから！！

こんな自分の声は彼女には届いてないでしょう。
昔の私もそうだったからね（自爆）

最後は
『絶対自分と別れたのを後悔するようないい女になってやる！』
ちょっと前向きな言葉を叫んでる彼女を応援したいと思った。
まだ、強がって言ってるのはよく分ってたから。

『本当に最後かもしれないけど、土曜に二人で会える事になった』
。。。ぶつけておいで。自分の全ての気持ち。

夜、寝る時にヨウの隣にいる自分を幸せに感じた。
ヨウも
「光さんには悪いと思うけど」
と私を強く抱きしめてくれた。

こんなに幸せに感じてていいのかな。
これが壊れる日がくるのかな、そう思うだけで恐いよ。

光は一人でいるのに、こんなことを考えてる私は親友失格、かな。