窓のそと(Diary by 久野那美)
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2001年07月04日(水) |
「かけがえのない」もの |
言葉はいつも、かけがえのないものをかけがえてしまう。 「かけがえのない・・・」という言葉でさえ、あらゆるひとの手に、その「かけがえのなさ」を等しく配ることによって「かけがえのなさ」を根底から破壊する道具になる。 どんなことをしても誰にも渡すことのできないもの、私だけのもの、ここにしかないはずのもの、絶対にほかのもので置き換えることのできないもの、が言葉を媒介にして遠くへ運ばれていくのはしばしばとても悲しい。
言葉を介して寄り添うことによって、孤独は癒される。 だけど、孤独がいつも悲しいとは限らない。 かけがえのないもののかけがえのなさを守るのも「孤独」だったりする。
だから。 たとえば誰かが誰かにとってかけがえのない何かを失くしたとき。 せめてその「かけがえのなさ」を絶対に共有しようとしないでいたいと思ってしまう。 無力さを痛感しつつ、同じ言葉で分かち合えないことを確認し、ただ、黙って通り過ぎることでしか、その「かけがえのなさ」は守れないような気がするから。
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「かけがえのない8人の尊い命」なんていうかけがえのないものは存在しない。 この言葉が絶対に表現し得ないところにしかないはずのものが失われたとき、 この言葉が意味し、共有されるものは、途方もなく悲しい。
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