『NSAポイントレース』
新潟県シリーズとしてシーズン中に何戦もあるようになったが、本家本元は、今回の上越国際をメイン会場(小学生は、須原会場、中学生・高校性・一般は、上越国際会場)にしたレース。今回で23回を迎えた。 小学生の場合、翌年の県連の強化選手選考の重要な参考になり、また、中高生にとっては、4月に行われるSAJB級J−Powerカップ(奥只見丸山:国内トップの招待選手が来て、ポイントをとりやすい。)の新潟県枠の選手選考のための重要な位置付けになっている。
第1日目 GS
マリは、31番スタートから一本目19位(中学生9位)。タイム差からいってまずまずのところ。旗門員をしていた私は、地形上ほとんど滑りを見れなかった。)。
二本目は、第9旗門の旗門員。スタート地点以外は、ほぼ全体に見渡せる場所を確保して観戦モードに入った。
ところが、その私に最初に待ち受けていた試練(?!)は、男子100番台の選手の旗門不通過だった。 大沢山コースは、スタートからの廊下を通っていく際に大きな右ターンになるのだが、男子二本目のセットは、第6〜第9旗門の4つの旗門でその右ターンを誘導していくようになっていた。ここを各選手はクローチングで通過。当然、ビブナンバーを確認することは不可能。さらに、二本目なので一本目のタイム順に滑ってくることになる。頼りになるのは、場内放送とスタートリストのみ。 旗門審判員歴20年超(^^)の私としても、この旗門でジャッジペーパーを書くことになるとは予想していなかった。・・・ったく、どこのどいつだ!(糸○川中の選手だった。)。
さて、男子200人弱のスピードGS観戦を終了した後、いよいよ女子の二本目の競技が開始された。
高校生は、長谷川絵美がレースに欠場し前走に回った。体重差で小日山がややリードか。中学生は、本命の金子あゆみが一本目でトキっていた。ウェイトのある小野塚彩那がやはりいい感じ。・・・とフリップ15の選手を見た後、いよいよ19番スタートのマリ。 廊下の後の急斜面を落とされずに攻略し、そのスピードを緩斜面にいかに繋げられるかが勝負(!)と第9旗門の旗門審判員は、考えていたのだが・・・。
スタートしたとの場内放送があった。 スタートの放送があると約5秒ほどで第9旗門審判員からも選手の姿が確認できるようになる。
心の中で、「1・2・3・4・5」 「・・・・・」 あれ?こない!
そのうちに、次の場内放送が・・・。 場内放送:『ゼッケン○○番 ○○選手 ○○中学校 スタートしました。』
そして約5秒後、マリとおなじオンヨネのワンピを来た選手の姿が・・・。
来た来たと思ったのに、ちょっと違う気がする。
「ぁ。」
「高橋亜季だ。」
・・・と、と、と、と、と、ということは。。。。。
(T.T)
今シーズン、参加するB級のGSをことごとく失敗し、安塚までまともなレースがないマリ。J−Powerに出るためには、ここでしっかり結果を残さないとダメなのに。一本目と同じ程度でくれば、充分なのに。なにやってんだ!
この時点でキレた。
もう後のレースは、見てない。嫌になった。アホらしい。
コースネットから遠く離れてゆっくり下りていく娘の姿を発見した父の怒りは頂点に達した。
頂点に達した私の怒り。
実は、いままでスキーのことで子供に怒ったことはなかった。 失敗しても、「次を頑張ろう。また明日から練習しよう。」と励ましつづけてきた。それは、大した選手じゃなかった自分自身の経験から、アルペンに失敗は付き物だし、失敗に腹を立ててもしょうがないよなぁという諦観にも似た気持ちがあったからでもある。
でも、これだけ失敗が続いていると、道具や練習環境を自分がやっていたときとは、何倍も違うように準備してやっているのに、なんで結果が出せないんだと苛立ってきていた。与えられた恵まれた環境。その中で力を出せないのは何故なんだろう。
マリの場合、客観的に見て高い運動能力を有していると思う。親の子じゃないところがあると思う。小学6年間、男子にカケッコで負けたことはないし。器械体操も教えたわけではないのにすぐできるようになっていたし。
ただ一つ、アルペン競技については、取り組みが遅かったと思う。 初レースが小学5年生の津南ジュニア(3月上旬)。 この時点で当時の同学年トップと一本50秒のコースで7・8秒のタイム差があり、テクニック的にはまさに大人と子供の差があった。
レース終了後、すでにキレていた私は、娘の姿を見つけた。マリは、いつものように仲間たちと談笑していた。
『悔しくないのか・・・。』
嬉々としているその姿を見て、頂点に達していた怒りは爆発を起こした。
「マリ!」 「マリ!こっちへ来い!」
困ったような顔をして、娘は、いつになく怒った顔の父のもとへ来た。
父:「今日はどうしたんだ?」 娘:「転んだ。」 父:「なんで転んだ?」 娘:「内倒したから。」 父:「内倒したって?あんな緩斜面で内倒して転ぶのか?転んでも滑ってくれば、いいだろう?」 娘:「板が外れた。」 父:「板が外れたら、履いて、また滑ればいいだろう?」 娘:「板が遠くにいってしまって、登れなかった。」
板が外れて、遠くにいって、レース続行ができないことは、まぁわからなくもない。アルペンではよくあること。誰もが経験している。
ビンディングに設定した解放値を超える過負荷がかかった場合、ビンディングは外れるようにできている。セーフティビンディングが導入されてから既に30数年経つが、いまだに誤解放があるのは、ボディ・ミラーの今季前半のSLを見てもわかる。正しい解放値でも外れることある。 また、レースにおいては、通常の解放値ではダメ。解放値は、練習時より2目盛りくらい上げるべきだと思っている。解放しなかったことによって怪我をする可能性より、誤解放によって怪我をする可能性のほうが高いとも思っている。
なので、スタート前に解放値を自分で調整させている。ほとんどのレース、スタート前に付き添っていてあげられない。スタートワックスやスタート前の準備は、本人にさせている。そして、ビンディングについては、スタート前に必ずバネをフリー(完全に緩める)の状態にしてから締めなおさせている。こうすることで、適正なビンディング機能が発揮されるし。
ところが、それなのに、スタート前にビンディングを見ていなかったというのだ。
「解放値がいつものとおりだったから、そのままでいいと思った。」
この時点で、娘のウソを発見してしまった。 それは、『解放値がいつものとおり』だということ。 実は、家を出発する時点で、トゥピースだけちょっと締めていた。 スタート前に確認していれば、解放値が違っているなというのがわかるはずなんだが。
過去に、あるレースで、ある有力選手がスタートハウスに入って、スタート直前に解放値がゼロになっていたという事件があった。当然、複数のサービスマンがチェックしているはずなのだが・・・。このように、『生き馬の目を抜く』という戦いも否定できないのがレースの実態だ。
・・・ということは、もしかして、いままでのレースもずっとビンディングについて何もしてこなかったんではないか?そんな疑念が生まれた。だから、完走が低かったのかも・・・と変な納得がいった。
SAJのB級レースでも顧問がしっかりいるところやチーム単位で動けるところは、スタート準備をコーチが行っている。そして、チーム力のあるところは、失敗がとても少ない。トランシーバーでコース状況を逐次スタートハウスの選手に届け、インスペクションイメージの修正をさせ、スタート順の遅い選手たちには、貴重な情報となっている。まぁ、戦略的にウソの情報を流している可能性も考えられるけど・・・。
娘のウソを見抜いてしまった私の怒りを静めてくれる人は、もうどこにもいなかった。以後、怒りまくった。まずは、ゴール地点で。そして駐車場で。他人にも聞こえる場所で怒鳴りまくった。
アルペン競技に途中棄権はよくある。それはお互いわかっている。でも、準備を怠ってレースに臨むのなら、もうやめてもらったほうがいいと思った。少なくとも、自分が現役のとき、親に経済的負担をかけているという負い目を感じながら、ヘタクソなりにもレースに集中していた。
いま、アルペンコーチ見習のようなことをしているけど、無理矢理、娘に競技をさせているわけではない。もっと低学年のときにやらせようと思ったことがあるんだが、本人が嫌だと言っていたし。
だから、やめてもらおうかな〜〜〜っと。お金もかからなくなるし、いいばっかりだ。なんて、チラリと頭の片隅に期待をしながら(謎)、失敗を責め、これまでのことを責めていた。
娘に対する責めは、帰りの車の中でも続けた(エロじゃないw)。そして、帰宅後も。さらには、ワックスがインスペクションの板に塗っていないことにも腹を立てて。 翌日にもSLのレースが残っているというのに、精神的にズタズタにしてやった(言葉責め♪)。
そして、就寝前に約束した。
『SLをきちんと滑らなかったら、来シーズンはない。』と思え。
ここが、私の甘いところなのだが。
きちんと滑るという定義は、いま親子では共通認識がある。ポイントは、いくつかある。
1 ストックをつくこと。 2 速く動いて、短いエッジングをすること。 3 ヘアピン・ストレートの入口を姿勢を高く、出口をきちんと踏んで抜けること。 4 上体を起こさない(あおらない)こと。 5 攻めること。
細かいチェックを上げればキリがないが、このまま重要ポイント順と考えている。とくに1〜3は、練習中でも常に確認している。
この基本ができてる選手なんてほとんどいない。できていればナショナルチームだ。
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