華のエレヂィ。〜elegy of various women 〜 | ||
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2002年10月17日(木) 籠の中の貞淑な小鳥。 〜浮気〜 |
<前号より続く> 俺は思い切って尋ねた。 「今まで浮気した事は?」 「・・・どこまでが浮気なのかな?」 「じゃあねぇ、Hにしよう。Hした事は?」 無いよ、とキッパリ言った。 若い頃の仕事先で、食事や喫茶に付き合った事なら何度かある程度。 そんなもの、浮気なんていうレベルじゃない。 「じゃ、浮気の第一号が俺かぁ」 「してくれるの?こんなオバサンでも(笑)」 「うちに来て、なんか料理を作ってもらおうかな(笑)」 「それが浮気?(笑)・・・でも彼女さんに悪いからな」 「大丈夫、今は誰もいないから!好きにやってよ!」 そんな言葉に本気で乗ってくるほど軽い女じゃないと分かっていたが、 敏子はこちらの話を本当に上手に聞き流している。 しかし時が経てば風向きも変わるように、 会話を重ねていくうちに、状況も変わってくるものだ。 何回か話をしたある日の事。 敏子が指導員を務めるガールスカウト団が、秋のバス旅行を計画していた。 紅葉散策がてら、山歩きをするという。 「でね、その時に子どもに配るお菓子を買いたいの。 名駅の近くに菓子問屋があって、実はそこに買出しに行きたいんだけど・・・」 その買い出し日に同行する人がおらず、敏子一人で向かう事になってしまった。 その時に一度会ってみようか、という話になった。 俺に異存はない。 平日の昼間だった。 俺は電車で待ち合わせ場所の名古屋駅を目指した。 名古屋駅の新幹線改札口前の広場は、この日も大勢の人間が行き交う。 時間より早く待ち合わせ場所に着いた俺は、 初めて会う敏子の事を思い、緊張を隠せなかった。 何度も話している人だし、品のいい女性なのはよく理解している。 でも予想以上にオバサンだったらどうしようか・・・ 声だけじゃわからない。 老けてて白髪交じりで、背中が曲がっていたら・・・ お茶だけして急用を作って帰ろうか、どうやってポケベルを鳴らそうか・・・ 半分は緊張、あと半分は失礼な事を考えつつ待つ。 敏子は紺のパンツスーツで来る、と言っていた。 そう思って見ると、往来する全ての中年女性がそう見えてきてしまう。 「平良さん、ですか?」 背後から聞き覚えのある柔らかな声。 振り向くと、そこに一人の中年女性が立っていた。 軽くパーマを掛けたショートヘアに小さいピアス。 ナチュラルメイクにパンツスーツ。 決して緊張感の無い生活を続けてきた中年主婦とは思えない女性。 「敏子さんですか、はじめまして!」 「お待たせしちゃったみたいで・・・ごめんなさいね」 近くの時計を見ると、待ち合わせの午後1時から5分ほど過ぎていた。 まずお茶しましょうと、名駅構内の喫茶店へ入る。 敏子は本当に緊張しているらしく、落ち着かない様子だ。 敏子は待ち合わせ時間よりも相当前に到着していたそうで、 俺らしき男をしっかりと傍から確認していながら、声が掛けられなかったと言う。 「そうかぁ・・・待ち合わせの時、俺も緊張したよ」 「そう?」 「だってどんな人だろうと思ってて、嫌な人だったら帰ろうと思ってたから」 「じゃ、もう帰る?」 「いや、ぜひ買い物に付き合います(笑)」 「いいのよ、無理しなくて」 俯き加減で、敏子はそんな自虐的な言葉を並べる。 でも表情は決して暗い訳ではない。 そういう言葉を俺に否定される事で、逆に安心したいのだろう。 冷め切る直前のコーヒーを一気に煽り、 俺たちは今日の目的地へと向かうために店を出た。 <以下次号> |
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