上海で結婚式を挙げた広告代理店時代の元上司から電話。
わたしのスピーチがとても良かったと評判なのだという。
「いやーいい話だった」と何度もお礼を言われた。
そんないい話をしましたっけと恐縮した。
わたしが話したのは、元上司が「cdmaOne(しーでぃーえむえーわん)」と呼ばれていたというエピソード。
彼は、良くも悪くも天才。
頭の回転が速く、自分の頭の中で作品が完成している。
その回転の速さについていけず、取り残される部下も多かった。
わたしもその一人。
そんな彼に、ついたあだ名が「cdmaOne」。
当時お目見えした携帯電話の通信技術。
本家のネーミングの由来は知らないけれど、
CD=クリエイティブディレクター
MA=マルチオーディオ(録音したナレーションと音楽や効果音をミックスして映像と合体させる作業)
ONE=ひとり
ということで、「一人でMAやってるCD」を意味する、まさに元上司に打ってつけな名前だった。
CM制作では、企画にはじまり、撮影、映像の加工、ナレーション録音などを経て、MAは仕上げ段階の作業。
最初はついて来ていた部下が一人減り二人減り、MAのときには一人になっているというリアリティもまた秀逸でどんぴしゃな名前だった。
とにかく「一人で何でもやっちゃって結果も出す人」だった。
元上司は「それ、ほめてるんかいな?」と突っ込みながら苦笑いして聞いていた。
ちなみに、わたしが「cdmaOne」と言ったとき、列席者の誰よりも先に受けたのは司会を務めたケイ・グラント氏だった。
ナレーターとして、元上司が手がけるCMの数々に出演しているケイ氏。
もしかしたら、ナレーション録音の段階ですでに一人ということも多かったのかもしれない。
cdmaOneの上を行くcdnaOne!
そんなcdmaOne話をした後で、わたしが脚本に携わった朝ドラ「てっぱん」の話をした。
「てっぱん」でやろうとしたのは「家族とは?」を描くこと。
もちろん、どんな朝ドラも家族を描いているのだけど、家族ってなんだろうということを26週かけて問い続けた。
何か月もの制作期間と放送を経て、作り手がつかんだ答えは、とてもシンプルなことだった。
家族とは、つくるもの。
一人では作れないし、一緒に住んでいるからといって作れるものでもない。
完璧ではない誰かと誰かが力を合わせて作るもの。
だから、元上司にお願いした。
一人で何でもできる人だけれど、家庭では、どうか一人で全部やろうとしないでください。
自分の力を引き算して、夫人の力を引き出してください、と。
夫人側の中国人の親戚の方々も喜んでくださったというから、通訳さんは、原稿なしの同時通訳で、cdmaOneを見事に訳してくださったのだろう。
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