2009年04月18日(土)  親しき仲こそ言ってはいけないこと

何気ない一言で、すうっと気持ちの底が冷えて、目の前の相手が一気にすごく遠い人のように感じる瞬間がある。今日、ひさしぶりにそれを味わった。

長年つきあっている気の置けない相手に、機嫌良く鼻歌なのか冗談なのかを発声していたら、不意打ちのように「君は声が悪いね」と言われ、面食らった。喧嘩の勢いなら憎まれ口だとわかるし、冗談を言い合っていてつい口が滑ったとしても、まだ理解できる。「私、歌手になろうっかな」「無理だよ。声が悪いもん」なら悔しくても納得はできる。だけど、いきなり真顔で冷静に告げられると、聞き流せない重みを帯びてくる。

何十年も聞かせてきたこの声をそんな風に思ってたのかというショックを受け、昔は心地よかった声が今は不快になったのだろうかと訝り、それはわたしへの気持ちを反映させているのかと悲しくなり、いじけ、口をきく気がなくなってしまった。深い意味がないのだとしたら思いやりがなさすぎるけど、意図があるとしたら、もっと怖い。

以前にも耳を疑う言葉が飛んで来て、ひどく傷つけられたことがあり、気持ちを鎮めるために日記に書いた(>>>2007年06月12日(火) 想像力という酵母が働くとき)。今日の何倍も胸に刺さる言葉で、今でもその7文字を思い出すと苦しくなるが、そのときも「どうしてこんなこと言うの?」とは聞けなかった。

応援する気になれない芸能人のことを「あいつは声が悪い」と言うことはあっても、友人や同僚に面と向かっては言わないだろう。以前、職場の上司が部下の彼女の写真を見て、開口一番「鼻が大きいね」と言ってのけたとき、周囲は一同あ然としたけど、きっとそんな反応が返ってくるはずだ。関係を壊したくないというブレーキが働けばそういう不用意なことはしないはずだけど、何をやっても許されるとたかをくくっている相手にはやってしまえるということだろうか。気の置けない相手だからこそ言ってはいけないことがあるとわたしは思うし、恋人であれ親友であれ家族であれ一生つきあっていきたい相手であるほど、治しようのないものを悪く言わないように気をつけている。その人の一部であるものを否定するということは、一緒にいたくない意思表示に聞こえる危険がある。実際そんな風に今日は聞こえて、こたえた。

【お知らせ】『鴨川ホルモー』4/18公開

試写の感想を以前の日記で紹介(>>>2009年02月04日(水) 映画になった『鴨川ホルモー』)したけど、あらためて。今井雅子と何かとご縁のある映画『鴨川ホルモー』がいよいよ4/18公開。

監督は脚本協力した『犬と私の10の約束』の本木克英さん、松竹のプロデューサーは4本目の映画『子ぎつねヘレン』でお世話になった矢島孝さんと、企画開発で本作りをご一緒したことのある野地千秋さん。さらに主役の安倍明役は3本目の映画『ジェニファ 涙石の恋』主演・荒木隆志役の山田孝之さん。安倍とあやしげなサークル青竜会に同期入部する三好ブラザーズの兄役に初の連ドラ『快感職人』で橘隼人役だった斉藤祥太さん。5本目の映画『天使の卵』で美術教師役だった甲本雅裕さんも出演。さらに舞台はわたしが学生時代を過ごした京都で、原作(万城目学)も大好き……という贔屓を差し引いても、十分楽しめる痛快青春映画。ぜひ!

余談だけれど、マキメって珍しい名字だなあと思っていたら、今読んでいる『シネマ大吟醸』(太田和彦)に万城目正という名前を発見、佐々木康監督の『純情二重奏』の作曲、同監督の『蛍の光』の作曲指導とある。「リンゴの唄」「東京キッド」もこの人が作曲。こちらは「マンジョウメ」と読むらしい。

2008年04月18日(金)  マタニティオレンジ270 おやつでごきげん延長保育
2007年04月18日(水)  マタニティオレンジ107 子どもの世界の中心でいられる時間 
2005年04月18日(月)  日比谷界隈お散歩コース

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