先日、はじめて買う豆腐屋の店先での出来事。ショーケースに並んでいるのが揚げ豆腐ばかりだったので、白い豆腐を求めて、「冷奴ありませんか」と尋ねたところ、「冷奴?」と店主が怪訝そうに聞き返した。豆腐屋なのに「冷奴」と聞いて意外がるとはこれいかに、とこちらも首を傾げた次の瞬間「絹ごし 木綿 百五十円」の札が目に飛び込んだ。あ、そうか、そういう呼び名があったと思いだし、「絹ごしありますか」と言い直したところ、店主はほっとした顔になり、店先を包んでいた険悪な空気は和らいだ。「冷奴」と言われては、「皿に盛って葱とおろし生姜と醤油を添えろというのか」と、そりゃあ困惑しますわな。
その豆腐屋の数軒先に、ダンナの幼馴染のテッチャン一家がやっている魚屋があり、立ち寄った。「このイカはどうやって食べるの?」とダンナが聞くと、「オニツケだね」とテッチャン。「鬼漬って漬物ですか」と聞くと、「煮付けだよ」とテッチャンに笑われた。イカ=沖漬から連想して、鬼漬なる珍味を生み出してしまったのだが、煮つけってめったに作らないし、わたしが作る煮つけには「お」はつかなそうだ。そんな危うい調理人にテッチャンは焼くだけでオッケーの銀だらの味噌漬をすすめ、「これ以上焦げ目つかせたくないってなったら、レンジ使ってもいいから」と丁寧にアドバイスしてくれた。
年とともにずいぶんしっかりしてきたと思っていたけど、まだまだだなあと痛感。昔から思い込みが激しいくせに、勘違いに気づくのは鈍感だった。「完璧」のペキの字の下が「玉」ではなく「土」だと思い込んだままコピーライターになってしまい、「誤植」が見つかって正しい字を知ったのだが、写植屋のミスではなくわたしの元原稿が間違っていたのだった。それまでの二十余年の間に気づくチャンスはいくらでもあったはずなのだが、一度も試験に出なかったのか、先生が間違って○をつけてしまったのか。おやつの「柿の種」が本物の種ではないと知ったのも大学生のときだった。「あの柿の種がこうなるのか」と感心して眺めながらボリボリ食べていると、弟のよっくんが「雅子、アホちゃう?」と突っ込み、「道理でおかきっぽいと思った」と合点した。整骨院のウキちゃんを笑ってばかりもいられない。
2007年03月20日(火) マタニティオレンジ95 満を持して『はらぺこあおむし』
2004年03月20日(土) アドフェスト3日目
2002年03月20日(水) はなおとめの会