冷蔵庫の奥にあるタッパーを取ろうとかがみこんで、「!」となった。髪の毛が落ちている。それも、五本。冷蔵庫のドアを開けて中をのぞきこむという一瞬の間に髪が抜け落ちる確率は相当低いと思われる。実際、これまでに冷蔵庫で髪を拾ったことなどなかった。産後3か月から6か月にかけてひどくなると言われる抜け毛の威力を見せつけられ、「体験しなくちゃわからないリアリティだなあ」と感心。でも、このリアリティは作品に活かせるのか。脚本のト書きに「雅子、冷蔵庫をのぞきこみ、!となる。髪の毛が五本落ちている。」と書いたところで、「髪の毛の寄りショットってわかりにくねー」とカットされそうだ。しかし、ネタとでも思わなければ、抜け毛なんてちっともうれしくない。シャンプーのたびに両手指に髪が絡みつき、排水口は髪で見えなくなり、鏡を見ると前頭部が明らかに薄くなっている。四谷怪談のお岩さんの心情がわかって、禿げる恐怖におののく中高年男性の悲哀を実感できて、ありがたやとでも思おうか。
一週間ほど前からは、髪をひっ詰めているわけでもないのに、前頭部が引っ張られるような、「いかにも髪が抜けそう」な痛みがあった。育毛サロンのCMでやっているように指先でマッサージすると、イタ気持ちいい。しばらく続けていると、引きつる感じはなくなった。抜け毛ストップのサインだといいのだけど。とりあえず、しばらくかぶってなかった帽子を引っ張り出したりして、「先輩ママたちが帽子をかぶっていたのは、ファッションではなく薄毛隠しだったんだなあ」と思い当たる。
昨日の読売新聞のコラムに「木の葉がしきりに落ちるように、髪の毛が目立って抜け落ちるのを『木の葉髪』といい、冬の季語である」とあった。授乳中もはらりはらり、今のわたしの状態は、まさに木の葉髪。そう呼ぶと風流なことをしている気持ちになる。ちょうど季節は冬だし。というわけで一句詠んでみたのが今日のタイトル。「冷蔵庫にも四季のあり木の葉髪」というのも作ってみたけど、冷蔵庫に髪が落ちているなんて普通は考えないから「産後四か月にて詠める」とか何とか解説を添える必要があるだろう。
2004年12月29日(水) 英国旅行3日目 巨岩と村と怪人
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