日本冷凍食品協会の啓蒙キャラクター『冷凍マイナス18号』ファミリーを抱える食育キャラクター軍団『Cook81』の開発でご一緒した企画制作会社、バタフライ・ストローク株式會社。同社が現在力を入れているキャラクター、Kami-Robo(カミロボ)は作家・安居智博氏が小学生の頃から30年近く作り続けている、ひとり遊び用紙製ロボット。トントン相撲のプロレス版をグレードアップしたもの、といえばいいだろうか。200体以上ものカミロボにはひとつひとつ名前がつけられ、得意技があり、所属があり、それゆえ派閥が生まれ、個々のカミロボ同士にも友情もあれば憎しみがあり、人間世界さながらのドラマを繰り広げ、歴史を刻んでいる。かなり奥が深い、というかマニアック。
このカミロボを作者自ら戦わせる「カミロボファイト」というイベントが時々開催されているが、今日と明日表参道ヒルズで行われている「魔王VSブルーキラー」は、安居氏が25年前に作った2体のカミロボ、魔神あらため魔王とブルーキラーを対決させるカミロボファイト。カミロボに扮したみちのくプロレスのレスラーがリングで対決、その模様を「居酒屋ブルーキラー」(かつて魔神とタッグを組んで大暴れしていたブルーキラーはセミリタイアし、レスラーたちのたまり場である居酒屋をやっているという設定)のテレビで観ている面々を演じるのが劇団ヨーロッパ企画。安居氏の作ったカミロボサイズの居酒屋をヒューマンサイズに拡大したセットを舞台に、カミロボ人間模様が描き出される。クライマックスは、安居氏によるカミロボファイトを実演とスクリーンで披露。
カミロボファイトもプロレスも劇団ヨーロッパ企画(映画『サマータイムマシンブルース』で知って気になっていた)も生で観るのは初めてのわたしには、一粒で3度おいしい競演となった。張り手や蹴りの音がビンビン伝わる距離で戦われるプロレスは迫力満点。前方宙返りして相手の上に腹ばいになって着地するなど、高さのあるアクロバットな技も繰り出され、見ごたえ十分。鍛え抜かれた肉体を誇るレスラーたちなのだが、カミロボに扮している設定なので、「身長128ミリ」などと紹介されるのがかわいい。
圧巻はカミロボファイト。文楽の人形遣いの姿が物語に引き込まれると見えなくなるように、二体のカミロボを操る安居氏の手が途中から消え、カミロボだけがリングで暴れているように見えてくる。戦いを終えた魔王とブルーキラーが肩を叩いてたたえあう頃には、本当に紙の体に心が宿っているように思えてしまう。それほどまでに安居氏の手の動きはカミワザ。
最後に挨拶に立った安居氏は、年はわたしより少し上なのだろうけれど、目は少年のままのようで、この目をしてずっと作ってきたんだなあと想像。好きなことをやり続ける情熱が、誰にも真似できない世界を作り上げてしまった。明日17:00と19:30にも公演あり(開場は30分前)。入場無料。スペースに余裕があれば入場券なしでも観覧できるので、表参道ヒルズ近辺に行く予定のある方は直接会場の多目的スペース[O:](B3)へ。
2004年11月25日(木) ソウなのか、ソウでないのか。