『絶対王様』というインパクトのある名前が気になっていたが、結成して11年になるという劇団の公演をようやく観る機会に恵まれた。一緒に見に行った女優・鈴木薫いわく「役者仲間の間でも、見る価値あるって評判なんですよ」とのこと。広々とした新宿・紀伊國屋サザンシアターはほとんど埋まっていて、固定客のファンがついているのかも。
幕が開く前にまずテーマ曲講座。「クラシック音楽の普及に前向きに真面目に取り組んでいる」のだそうで、今回の『やわらかい脚立〜あなた、存在する意味がありませんよ〜』のメインテーマはチャイコフスキー作曲の『ロミオとジュリエット』。続いて、アンケートに答えた人の中から抽選で当たる賞品の紹介。時計やピアスやアロハシャツなど、なかなか豪華。もちろん説明の口上でも笑いを取る。幕が開くと、ひと芝居あった後で、スクリーンにビジュアル入りクレジットロールが映画のごとく流れる。「寝るとわけわかりませんよ」という字幕の脅しもおちゃめ。実際には次々といろんなことが起こるので、眠くなるヒマもスキもなし。台詞はテンポよくノリよくボケと突っ込みも小気味よく、わたしはけっこう笑えた。
出演は絶対王様のメンバー7人(作・演出の笹木彰人さん、有川マコトさん、菜葉菜さん、入山宏一さん、加治木均さん、郡司明剛さん、小橋川健治さん)の他に5人がゲスト出演。こないだの『Brains』での怪演が記憶に新しいbird's-eye viewの杉浦理史さん、*pnish*(チラシいわく人気イケメンユニット)のリーダー佐野大樹さん、Chintao Records所属の山中崇さん、東京スウィカ主宰の吉田羊さん、そして、ひきこもり青年役が印象的だった中泉英雄さんは映画でも活躍されているそう。
チラシには「人は誰からも必要とされないと存在する意味がないのか?をテーマにした絶望喜劇演劇」とあるが、タイトルの『やわらかい脚立』が「必要とされないもの」の象徴として最初と最後に出てくる。しっかりしてなきゃ使い物にならない脚立だが、ラストではちょっぴり役に立つ使い道が見つかって、その終わり方に救われた。モノもヒトも誰かに必要とされてこそ存在する意味があるわけで、見方を変えれば、何かや誰かを必要とすることは優しさでもある。
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