■小原孝さんと佐山雅弘さんが二台のピアノを奏でる『Piano de Duo』を聴きに行く。好評のうちに回を重ね、今回で4回目。会場はJR上野駅向かいの東京文化会館の小ホール。小ホールといえども中は広々、天井は高々。コンサートというものとは長らく縁のなかったわたしは、そのスペースのゆとりに感激する。座席は、一段高くなる後方部の最前列ど真ん中。まわりからは「誰々の次のリサイタルは」「先日のどこどこで聴いた音は」といった通な会話が聞こえてくる。■第一部は二台のピアノが向き合う形。オープニングの後、座席の高さに差をつけた椅子が運ばれ、モーツァルトの「4手のためのソナタ」を連弾。また元の位置に戻り、「軍艦マーチによるパラフレーズ」(中田喜直)。「このホールに最も違和感のある曲」という紹介通りの面白い取り合わせだった。二人とも実に楽しそうに弾き、嫉妬を覚えてしまう。ピアノと一緒にこちらの心も躍り、歌うよう。繊細、理知的に見える小原さんと、旺盛なサービス精神が顔に表れている佐山さん、少年のような遊び心と茶目っけを備えた二人はトークも絶妙。ピアノコンサートでこんなに大笑いした記憶はない。ピアノの配置をハの字型(狭いほうが観客側)に変えた第二部は、ビートルズメドレー36曲を40分以上にわたってノンストップで披露。ソロパートを弾く小原さんの背中を見つめて笑いを誘っていた佐山さんは、演奏に熱が入って暑くなってくると、どんどん高音部に移動して最後は鍵盤の外まで行き、舞台裏に上着を預けに行った。仕草がいちいち微笑ましく、次は何をやってくれるのかという期待で目が離せない。二人ともどうしてこんなに美しい音をこんなに楽しそうに奏でられるのだろう。メドレー後半、Hey Judeの盛り上がりでは、なぜか涙が出てくる。アンコールに応えて、佐山さん作曲のマンボ(あだ名はサヤマンボウ)。その後のトークの流れで「もう一曲やる?」と小原さんが持ちかけ、日本の歌(タイトル失念)。弾くのが楽しくてしょうがない感じの二人の音を感じ、余韻に浸るのも、楽しくてしょうがなかった。■小原さんとは、脚本と作詞を手がけた2002年のNHK夏の特集『真夜中のアンデルセン』でご一緒した。全編を小原さんのピアノが彩った、市村正親さんのひとり舞台。あらためて、ぜいたくな企画だったと思う。
2001年12月01日(土) 函館映画祭2 キーワード:これが有名な