■今夜のSWAPは大いに盛り上がった。といっても、新宿・シアタートップスで観たPLAYMATEのお芝居の話。『SWAP』は何かの頭文字でもなく金融取引の話でもなく、二組の夫婦の交換(パンフには「交歓」ともある)の物語。作者の川上徹也さんと広告関係者の飲み会で知り合った縁で初演を見たのが8年前。大阪と東京でこっそり上演したら口コミで人気が爆発したという作品で、将来自分が脚本を書くとは想像していなかった当時のわたしは、あまりの面白さに衝撃を受けた。ところが、今回の再々演を見るにあたり、前回どこが面白かったのかを思い出そうとしても具体的には思い出せない。結果的に、初めて見るお芝居のように新鮮だった。脚本が変わったのか、見る側のわたしが変わったのか。いちばん変わったのは、8年前はシングルだったわたしが、今は結婚していること。それだけでも登場人物にぐぐっと接近したわけだけど、今回は野口かおるさん(この女優さん、とってもいい味)演じる中川都なる新婚妻が、着ているものといい性格設定といい自分を鏡写しで見ているようで、かなり当事者感覚で楽しめた。見終わった後に川上さんに「都はわたしだって思いました」と伝えたら、「観客アンケートの9割は『私は小雪(もう一人の新婚妻。人に羨ましがられる仕事=フリーアナウンサーをしながら満たされていない)だ』って書いているので、今井さんは貴重な1割です」と言われる。■夫婦が2組いたら、考えられるカップルの組み合わせは2パターンしかない。今のままか、入れ替わるか。そして、その範囲の中で話を転がそうとしてしまう。でも、川上さんの本では、そうはいかない。4人から2組のペアを作るには、もう1パターンの可能性がある。そこに目をつけたことがこの『SWAP』を複雑に、そして面白くしている。ベッドの話なのにジメジメせず、不倫を描いてもドロドロしない。川上さんの軽妙なタッチに今回も拍手。「好きの反対は無関心」なんて台詞回しも、さすがコピーライター。出演は近江谷太朗さん(佐伯林太郎役)以外は初演と変わり、林太郎の妻・小雪を八木小織さん、都の夫・俊一を京晋佑さんが演じる。皆さん伸び伸びと好演していたけれど、いちばん生き生きしていたのは後半のトランプゲームの場面。役者さんが「役と本人の混じった状態」になって、際どい質問攻めに答えあう。このシーンは初演でも笑いを誘っていた。演出は第三舞台出身の板垣恭一さん。
2002年10月14日(月) 四あわせの五円玉