■最近気に入って使っているたとえが、「ブドウはほうっておくと腐るけれど、手をかければ熟成してワインになる」。中古品とビンテージの違いも同じ。人間も年を取って衰えるのではなく、年月をかけて磨きをかけていく生き方ができるはず。ということを話すと、「わかるわあ」と熱く支持するのは、わたしと同世代あるいはその上の女性たち。身に覚えがあるのだろう。「熟成よ」と言い聞かせて年齢と立ち向かう時期に来ているのだ。わたしより下の世代の女性たちは、「まだピンと来ません」という顔をする。一方、肌の衰えが頭髪ほどは気にならない男性たちは、「女って大変だね」とか「せいぜい頑張ってください」といったとんちんかんな反応が多い。いちばん強烈だったのは、「ところで、腐ったブドウからワインってできるんですか?」。つまり、今からがんばっても手遅れなのでは、ということ? まだまだブドウのつもりでいたが、もはやブドウではない? そこまでは考えていなかった。この一撃で、「かわいこワインになるぞー」とワイングラス片手に韻など踏んでいたわたしの酔いは一気にさめた。■先日、脚本家の川上徹也さんに会ったときにこの話をしたところ、「そういや貴腐ワインってのがありますよ」と教えていただいた。調べてみると、微妙な天候のいたずらで、ごくまれにブドウにカビが生えることがあり、このブドウから作られた貴重なワインが貴腐ワインとのこと。腐ったブドウでもワインになれることはわかったけれど、自分がいまどの程度のブドウ状態にあるのかは謎のまま。腐ったブドウか、熟成したワインか、はたまた腐ったワインか。さてどこへ向かっているのやら。
2001年12月27日(木) 今がいちばん若い