2003年10月19日(日)  100年前の日本語を聴く〜江戸東京日和

100年前の日本語を聴く」というポスターに興味をそそられ、江戸東京博物館へ。パリ万博の際に世界各国から集まった人の声を録音したものを公開する試み。スクリーンに映し出されたレジュメをもとに研究学者の方が解説をし、それに添って録音を再生していく形で、言語学学会を聴講させてもらっているようなアカデミックな内容だった。

「パリ万博で人気を博した日本の五重塔が六重塔になっていたのは、フランスでは1階を0階と数えるから、5階建ての塔を作ろうとして6階になったのでは」といった興味深い話も聞けた。百年前、緊張してマイクに向かった人達の声を今の日本で聞く不思議。大昔のように感じるけど、言っていることはちゃんとわかる。タイムマシンに乗って百年前の人に会うことがあっても、話は通じるぞ。パリ人類学協会の厚意により、ネット上で一部公開されているので、興味のある方はこちらの下のほうにある「パリ録音(1900)の見本」をクリック。

ついでに企画展「東京流行生活展(11/16まで)」をのぞいたら、これがまた食べるものと着るものが大好きなわたしのハートを鷲づかみ。

竹久夢ニの小説「恋愛秘話」(1923 大正13年)の一節《昔は、見そめる、思ひそめる、思ひなやむ、こがれる、まよふ、おもひ死ぬ、等等の言葉があった。今は一つしかない。「I LOVE YOU」》にしびれたり、考古学ならぬ考現学を提唱し、今を生きる人々が何を身に付けどのように行動したかを観察し、まとめ上げた今和次郎(こん・わじろう)という学者を知ったり(この人の描いた「銀座のカフェーwaitress服飾特集」や「丸ビルモダンガール散歩コース」などのスケッチは、「散歩の達人」にそのまま使えそうな今っぽさと味がある)、昭和40年代の大東京土産「空気の缶詰」に印刷された「汚れた空気の缶詰 田舎では得られない珍品」のコピーに吹き出したり、昭和47年に康康・蘭蘭が来た頃のパンダブームの頃のぬいぐるみを見て、「わたしも持ってたー」と懐かしくなったり、一人百面相をしながら大正から昭和を駆け抜ける。

映像ホールでは昔の映像を無料公開。昭和30年代に作られたという東京の最新観光事情をまとめたフィルム。当時の東京観光の人気ベスト5は「皇居 東京タワー 羽田空港 霞ヶ関ビル 浅草」。「交通ラッシュも高速道路も観光対象」だったらしい。観光とは日常を離れた体験をすることなので、東京の人にとっての観光は「前衛演劇」であり、そこで「芝居よりも若者の風俗を見ていた」そうな。うーん、あなどれない奥深さ。江戸東京博物館はかなり遊べるぞ。着物体験なんてのもやっていた。

夜は駒込にある旧古河庭園へ。秋バラの季節で10/1〜19の10日間だけ夜のライトアップを行っている。足を踏み入れたのは初めてだったが、洋館とイギリス風の庭園と日本庭園が共存する夢のような場所で、行き交う人々の表情もどことなくうっとり。外国の庭を歩いているような夢見心地を味わう。特設テントではビーフシチューの前に行列。グラスワインを売っているのも気が利いている。期間中の土日だけコンサートを行っていて、今夜はマリンバの合奏。軽やかな音色のハーモニーが広い庭を満たした。今年は江戸開府400年。歴史のある街に住むのは面白い。

2002年10月19日(土)  カラダで観る映画『WILD NIGHTS』

<<<前の日記  次の日記>>>