■大槻ケンヂさんの『わたくしだから』を読んだ。題字の書体、一時期こういうのが流行ったなあと懐かしい。初版は1990年となっている。会社のフロア移転のとき、廊下に出されていた古本の中から掘り出した本だった。そのとき一緒に救出した大槻ケンヂさんの 『行きそで行かないとこに行こう』は通天閣のビリケンさんの謎に迫ったり、ヘンなオヤジのいるカレー屋に勝負を挑んだり、なんでもないような「お出かけ」ドキドキした「探険」に仕立てている面白い本だった。そうそうもう一冊あったっけと引っ張りだした『わたくしだから』もまた楽しめた。この人の文章の魅力は、物の見方、起こった出来事との距離の取り方にあるのかもしれない。人が聞けばブッ02ぶような過激な話をさらりと語り、超マイナーな本や人物の紹介を熱っぽく繰り広げる。その温度差が気持ちいい裏切りとなって、読んでいて痛快な気分になる。入社した頃「大槻ケンヂはすごい。視点がいいんだよな」と褒めちぎっていたクリエイティブ・ディレクターがいた。わたしが廊下で出会ったのは、彼が当時読んでいた本なのかもしれない。