■大阪弁の映画を作りたい。それも痛快なやつ。ドン底に見える状況で、たくましく生きている人たちの話がいい。たとえばホームレスとか……という企画を、しばらく口にできなくなってしまった。今出したら、「それ、三池崇史監督の『桃源郷の人々』やん」と言われてしまう。今日、東映本社で試写を観てきた。原作は、『ナニワ金融道』の青木雄二氏が映画のために書き下ろした初の小説。『パコダテ人』を制作したビデオプランニングが企画・制作協力している。プロデューサーの三木さんが「傑作です!」と百万回言うので、得意の口八丁かと思っていたら、本当に面白くて、吹き出す場面が何度もあった。思いきり笑わせて、ちゃんと泣かせてくれて、終わったときにはスッキリした気分になっていた。「目的」のために団結し、突き進む人たちは、生命力にあふれていて、見ていて気持ちがいい。主役の「ホームレスのリーダー=村長」を演じた哀川翔さんの飄々とした感じが良かった。この人の台詞でいちばん気に入ったのは、「お」という独り言。大阪の人は「お」と「ん」の間のような微妙な相槌を打つ。青木雄二氏本人がモデルと思われる小説家の鍬田役の佐野史郎さんも、村長の恋人役の美容師役の室井滋さんも、いい味が出ていた。台詞は全体的に生き生きしていて、うまいなあと思った。脚本は高橋正圀氏。■『パコダテ人』のキャストとスタッフの姿を劇中の至るところで発見。お父さん役だった徳井優さんが、チラシ印刷の得意先だったスーパー、上底屋の倒産で路頭に迷う梅本印刷の社長役を好演。情けなさ、やるせなさ、切実感がよく出ていて、涙を誘われた。編集局長だった木下ほうかさんは、ホームレス役で出演。興信所にいたという設定で、裏の手を使って情報をかき集める。函館スクープ社員だった大蔵省くんは印刷会社の社員役。やっぱり、えなりかずきに似ている。その大蔵省くんより思いっきり目立つ役で女優していたのが、パコダテ人でも桃源郷でも衣裳デザインを手がける小川久美子さん。梅本印刷社長の義理の妹役で何シーンも登場。助監督だった塚田さんも一瞬出ていた。後から聞いた話では、スチールの石川登拇子さんも出ていたらしい。『パコダテ人』関係者ではないが、原作の青木雄二氏も弁護士役で出演していたとか。さすが錬金術師、三木さん。
2000年07月11日(火) 10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/28)