■ついに『マジェスティック』を観た。有楽町マリオンの9階で左右に並ぶ丸の内ピカデリー1と2では、今わたしの中で「見たい映画ナンバー1」を競っている『マジェスティック』と『I am Sam』が究極の選択を迫ってきたが、前者を選んだ。あらすじをよく調べずに観たので、主人公が「デビューしたての映画脚本家」と知ってうれしくなる。おかげで思いっきり主人公に感情移入して観ることができた。「わたしが同じ立場に遭ったら、パコダテ人を観て記憶を取り戻すのかなあ」と考えたりして、人と全然違うところで涙ぐんだりした。感心したのは、ストーリー展開。「赤狩りで自由を奪われた男」と「自由の国のために戦死した英雄」の対比がうまい。思想・言論の自由を守るという説教くさくなりそうな題材を涙で包んでしまう持って行き方。それで彼女は、試験にうかったばかりの弁護士だったのね、なるほど。やっぱり、シナリオは人物の置き方が大事だなあ。いちばん泣けたのは、ルークが戦地から恋人アデルにあてた手紙の「もしもそよ風が君の頬を撫でたら、僕だと思って欲しい」という一節。この手紙でぐっと心をつかまれたので、クライマックスの証言シーンも心に響いた。フランク・ダラボン監督は、『ショーシャンクの空に』がデビュー作で、『クリーンマイル』『マジェスティック』で3作目。人間讃歌の作品を着実に紡いでいる。■MAJESTICと聞くと、カンヌ広告祭のときに飲み明かしたホテルの名前を思い出してしまう。とても高いホテルなので、ペーペーの若者たちは、そこで飲むことはできても泊まることはできなかった。気持ちのいいテラス席で「広告とは」「今日見た中のベストは」などと熱く語り、安宿の「路地裏ビュー」(「オーシャンビュー」に対抗して、若者達がつけた)の部屋に帰っていくのだった。