会社の仕事では企業の広告を書いているが、先日ヒヤッとする出来事があった。「1,000円」と打つべきコンマがピリオドになっていて「1.000円」と1000分の1にデノミされていたのだ。恐ろしい価格暴落!初校(印刷屋さんから最初に上がってくるチェック用の刷り原稿)段階で気づいたからよかったものの、見落としたまま雑誌に掲載されていたら、首が飛ぶところだった。1000円だったら欲しくても買わない物でも、1円だったら要らなくても買ってしまうのである。誤植はコピーライターの命取りだと常々脅されているが、慣れは油断を生む。たまにこういう緊張が走ると、しばらくは血眼で校正するようになる。
コピーライターが集まると「今までにやった、いちばんすごい誤植自慢」話になる。「活き活きキングほっき貝」の「ほ」に濁点をつけたまま世に出してしまったE氏が、わたしの知る最強の誤植王。彼を超える失敗はまだ聞かない。「植」は「写植」の植。誤植は文字の植え間違い。この頃はコンピュータで作ったデータをそのまま印刷に回すので、写植を使うこともめっきり減った。
文字を見たら校正してしまうクセがついているので、人よりも誤植が目についてしまう。職業病だ。函館港イルミナシオン映画祭から送っていただいた前回のシナリオコンクールの入賞作品集を一気に読んだが、「てにをは」や漢字の間違いがあまりに目についたのが惜しまれた。せっかく作品の世界に入り込んでいるのに、誤植のたびに立ち止まり、現実に引き戻されてしまう。校正したのに作者が見落としたのだとしたら、もっと自分の言葉に責任を持つべきだし、出版する側も気をつけてあげて欲しい。かく言うわたしも、ちょくちょく誤植をやらかし、気づいては訂正している。