なあ、マスター、聞いてくれよ。・・・そうだな、ミルクココアをもらおうか。 ・・・俺は実はポッパーなのさ。ああ、ポップンミュージックというアーケードマシンをこよなく愛する奴らのことでな。
今日は気候もいいし、特に用事もなかったから、仕事が終わってすぐに自転車でゲームセンターに行ったんだ。100円を二枚ほどポケットに用意してな。 土日を越えた月曜日だから、おそらく人も多いだろう・・・そんなことを思ってマシンを覗くと、案の定、一組のアベックが楽しそうにポップンをプレイしていたのさ。そいつらは前からよく見かけるやつらで、俺も話したことがある。奴らは二人とも上級者ポッパーだから、それぞれ1回ずつやって・・・まあ、3回目には出番も廻ってくるだろうと踏んで、待っていたんだ。
しかし、俺がいつものスタンバイ位置に立ち、そのプレイを見守っていた時だ・・・。 ドカドカドカドカ!! と地を響かせ揺るがせる勢いで、走ってくる奴らがいたのさ。・・・ああ、女だった。三人だ。全員、中学生だったな。全員目がねをかけていた。そのうち二人はそのぅ・・・体格が良かったな。うん。横にな。 ああ、来たなと思ったのさ。ヤケに目をらんらんを輝かせていたから。そして、マシンの側に辿りつくなり、プレイしている人間の背中を尻で押しのけ、一人が奥の別のマシンに飛びついた。他の二人は特に親しい間柄でもないだろうに、プレイ中の男の至近距離で画面を覗き込むのさ。
・・・俺はアベックの顔色をうかがったね。女の方はすごく嫌そうな顔をしていた。そりゃそうだ、中学生が不躾にプライベートゾーンに入り込んでいるんだからな。 けど、そのアベックも結構アレなんだぜ。ちょっと前に、アベックとその仲間の後ろで俺は順番待ちしていたんだが、奴らは・・・アベックとその仲間は、順番がわからなくなるように、仲間内でぐるぐるとプレイを回していたんだ。俺は30分ほど待ったが、阿保らしくなって帰ったのさ。・・・まあそんな恨みもなくはなかったから、ちょっとほくそ笑んださ。 中学生VS大学生アベック。どちらがどんな風に出るか・・・俺はちょっと離れて順番待ちをしつつ見守っていた。
けど、俺の方が先に待ってたんだ。今プレイしている男の次は俺だよな。だから、一度プレイしたらさっさと帰ろうと思ってたんだ。何せ、この中学生・・・男の側を通る度に尻で背中を突き飛ばすんだ。いや、絶対故意じゃない。どうしてもそうなってしまうくらい、横に広かったんだよ・・・。 マシンのすぐ側には2階への階段があった。階段とマシンとの細い通路に人が入ってプレイするとなると、その隙間は通常の体格の人間が一人通れるほどにしか開かないんだ。・・・な? どうしても、突き飛ばすんだよ・・・とんでもないプレイをしている側を、ドシンドシンと。俺は見るに耐えなくなって、明後日の方向を向いて冷や汗を流していたさ。
そして、やっと男のプレイが終わった。さあ俺の番だ。俺はマシンの側まで寄って、男がそこを去るのを待った。・・・ところがだ。 ヤツは・・・あの体格のいい中学生はな・・・俺を完全に無視して、男が去った後すぐにマシンに飛びついたのさ!! 堂々と割り込まれたわけさ。俺は呆気にとられて何も言えなくなったね!!! 完全に無視だぜ!? ほんとにびっくりしたよ。プレイとプレイの間に振りかえって、UFOキャッチャーに行った別の中学生に声をかける時も、真後ろに立つ俺と目もあわせやしない。何か銅像でも立っているように無視するんだ。・・・都合の悪い時は無視しなさいと親に教育されたんだろうか。いや、それとももっと恐ろしいのは・・・自分はまったく悪くないと思っているのかもしれない・・・。
ともかく、俺はもう一度、アベックの顔色をうかがった。二人はレーシングマシンのシートに座って何やら話しているんだが、女の指がクイクイと俺を指し、中学生を指し・・・ああ、こいつらはわかってるんだ。奴らが割り込んだことを。 まあいいさ。なかなか面白いじゃないか。そう思って、俺は腕を組んでそのプレイを見ていた。選んでいるキャラは当然アッシュ2Pカラー。選ぶ曲も当然アッシュ。・・・典型的なポプtyubo! か。 腕もそんなに良くなかった。・・・まあそいつはまだマシだったけどな。別のマシンで飛び跳ねながらボタンを押している別の厨房はことごとくタイミングを外していた。信じられないくらいリズム感がなく・・・俺はため息をついたね。
ほんとに、すごい。感服した。どこからその理不尽な態度が湧いてくるのか。 挙句アレだ。プレイを終える度、「いやーんアッシュ萌え〜」と腰や尻をくねらせる厨房…頼むから、その尻でこの通路で腰を振るのはやめてくれ、災害だと俺は叫びたくなった。
そして…やっと順番がまわってきた。他の中学生がまた割り込む危険性を感知して、俺はサッと位置についたのさ。そして無言の圧力で中学生を退けた。多分、いや、絶対にまったく効いてなかっただろうけどな…。 俺は、今日はこの1回きりだ。だから後悔しない選曲をしようと、チャレンジコースを選んだのさ。…ああ、上級者向けコースと思ってもらって構わない。
俺は順調にクリアしつつ…3曲目。恐ろしい速さの曲を選んだ。トゥーイポップって曲さ。最近やっと出きるようになったんだ。 段々クリア確率も良くなってきたもんだから、よし、これだ、と選んだ……でもな。 今日は調子が微妙に悪かったみたいなんだよ。厨房の立ち回りに目眩を覚えてたしな。 今まで失敗してなかったあるフレーズを…俺はことごとくミスした。そして、ゲージが一気に0になったんだ! この曲でこうなると、もうほとんどクリアできる見込みは少ない。俺はさぁっと青ざめ、必死に打ちつづけた。画面の黒い部分が反射して、後ろで待ち構えている中学生を見た。 俺は燃えた。いかん。駄目だ。今ここで奴らにマシンを引き渡したら、俺の腹の虫が収まらねえ! 俺は意地だった。意地とプライドにかけて、戦った。そして…クリアしたんだよ。あの状態から、フルゲージクリアまで持っていったんだ。…執念だったな。BAD64という物凄い数字だったが、それからはほとんどパーフェクトで打ったんだ…。なあ、マスター。人間ってやっぱり、プライドの生き物なんだよ……ううう…。
俺は結局、4曲すべてやり遂げた。頭痛と目眩を覚えながらマシンを離れ、「帰ろう」。そう思った。リュックを背負って出口に向かおうとして…ふと振りかえったんだ。 …なあマスター。俺は目を疑ったね。 マシンのすぐ側では、順番が次のはずのアベックが待っていたんだが…あの体格のいい厨房が、それを押しのけ、プレイしていたのさ………。 若い子のパワーっていうのはすごいねぇ…ははは…。
別のところで使ってほしいもんだけどな!!
****************************** というわけで、バー風でオブラートに包んでみました。 いや…だからね。ホントにノンフィクションよ。もう、目眩して倒れるかと思ったもの。私が中学生の頃、こんなに不躾だったかしらとね…。ついでに今書いててじんましん出てきたしな…(ーー;)
久し振りに長文だし。それもこれも母親の帰りが久し振りに遅いからだやっほー!!(そろそろ壊れてきた)
ぷ。今弟が階段でコケた。(どうでもいい)
ほんとに厨房って…はぁ…大学生のお兄さん、お姉さん、私達が大きくなったら注意するようにするから、今は私達を守って欲しい…(T_T)
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