FILL-MIND [フィルマインド]心情記 

   
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2003年10月28日(火)  ■朽ちる心■

今年の春ごろもそうだったのだけど、一年前の自分っていうものを振り返ると、まるっきり赤の他人のそれのように思えて、不思議な感覚に陥る。

偉そうな言葉やまだらっこしい言い回しが、ぽんぽんと思い浮かんでは文章にしていた姿を垣間見て、哲学もどきに悦に入ってる様には、自分ながらに可笑しくなってしまった。

私はほとんどの場合あまりストレスを溜めないたちだから、うつな気分を実感するなどあり得ないと思っていたのだけど、どうにも覇気がなくなってしまった生活感には、うつとしか言いようがない状態だったのだと思う。

昔、多分、バロウズの本だったか、「人間がずっと同じ格好をしたままトイレにも立たずに座り込んでいたら、そのうち内臓は下部に溜まるように落ち込み、終いには使い物にならなくなって朽ち果てていく」といったような記載を読んだことがあった。

結局その本は私にはマニアックすぎて読み切れなかったけど、妙にそのシーンだけは生々しく記憶に残っている。現実から逃げ出したくなる時、私は決まってその鮮明に焼き付いた情景を思い出してしまうのだ。

自堕落で怠惰な生活の極限にうつつになってしまうのは、ある種の逃避的幻想の世界が脳に渦巻いた、うつの一種なのだろうと私は分析するのだけど、実際のところはどうなのかはよくわからない。

心が朽ちるという表現はそんな私の深層心理から生まれてきた。

ポキンと折れてしまったり、カラカラに枯れてしまったり、年令とともに心は状態を変えて、治癒に時間が掛かるようになるなんて、十代のころは思いもよらなかった。

何かに傷付いたり、落ち込んだりするのとは微妙に違う。それが年令によるものなのか、環境なのかは、今の私には計り知れないけれど。

本当に朽ちてしまう時、人はどうなってしまうのだろうか。少なくとも私は、朽ちて溶けてしまうほど、おそらく一所に立ち止まってはいられない。朽ちてしまう前に、欲が手を伸ばしていつか宙をまさぐってしまうだろう。

今、ここに言葉をこぼしているように。



 
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