何時も傍に居て
オレだけを映していてよ
一生埋められない年の差が
オレの知らないあのヒトの時間を知っているかもしれない誰かの存在が。
何時もオレを焦らせる・・・
言葉だけじゃ足りなくて
なのに、触れるだけじゃ多分止められないから
理性が接触を拒む
ココロとカラダがバラバラになる・・・そんなことが起きるとしたら今だよ
that talk
「手塚は、、僕の気持なんて解ってるよね?」
・・・・・・っ!!!
耳に聞こえてきた言葉に咄嗟に口から罵声が飛び出そうになるのを堪えて。
オレは部室の扉の前にもう一度、座り込んだ。
今、、、何ていった…?!
聞こえてくる言葉、紡いでいるのが誰だかは直ぐに解った。
あんな声を出す人間なんて青学には。
オレの知る限り一人しか居ない…。
そして、あんな甘い声を出しているからには話相手は部長に決まってる。
舌打ちしてしまう自分が。
苛立ちを感じる自分が。
やけに子供に見えて。
たった二年。
どうしてオレは遅れたのかと。
思うのは何時もこんな時だ
大事なヒトに悪魔の囁きが降りかかるとき。
解っていても。
頭の中では、あのヒトが拒否するだろうと。
知っていても尚。
不安がオレを囲みだす。
御願いだから。
早く言葉を出してよ。
どうして、、、
こんな時間に二人でいるんだ....?
こんな場面には、働かせたくない頭がフル活動を始める。
色んな確率を出す。
乾先輩並みのデータが収集されて。
この状況がいかにして発生したかを探り出す。
そこから、どんな返事をあのヒトが返すかを予想してしまう。
こんな風に、こっそり聞いているのも。
飛び出して終わりにさせてしまうと、今度はオレの知らない所で不二先輩に接触をもたれそうで。
それは避けたい。
オレが守れない場所での逢瀬は嫌だ。
相手が不二先輩なら尚のこと・・・。
「不二、用件ははっきり言え。俺は人を待たせている、、、手短にと言っただろう」
聞こえてきた答えは。
答え、、、ではなく。
……
どう考えても、不二先輩の告白かと思える展開なのに。
どうしてあのヒトは....
緊張していた身体が脱力してしまう。
こめかみを押さえて唸りたくなるのはオレだけじゃないだろうな...と思った。
部屋の中のもう一人もそうだろう。
今更、だけれど。
部長は鈍い...。
あのヒトにはその場の雰囲気の流れとかは見えないんだ...。
直球も直球でなければ。
はっきり伝えて答えを求めようとしないと。
部長は変な解釈をしてしまう。
決して人の感情の起伏に疎いわけではなくて。
あの人、自分に向けられる感情に鈍感なんだ。
自覚がないから、ある意味心配なんだけど。
不二先輩も、オレより付き合いが長いのに。
部長を手に入れられずに終わった(終わってない気がして気が気じゃないけど)のは、はっきり部長に迫ったりしなかったからだ。
むしろ、不二先輩は、部長との掛け合いを楽しんでいた節があるし。(黄金ペア談)
オレとしては、早い所、部長には不二先輩へ引導を渡して欲しいと願ってる。
断られたからといって不二先輩が引き下がるような相手じゃないってことくらい知ってる。
でも、幾ら鈍い部長でも、自分に恋愛感情向けられてると知ったら、少しは警戒するようになるんじゃないかと思って。
それなら、さっきみたいに緊張する自分が、気分悪いけど、さっさと打ち明けて玉砕して欲しい所だ。部長に、オレ以外の人間とは距離を置いて欲しい...
青学NO1とNO2で、いちゃいちゃされたらオレだって気分悪い。
部長に言っても、不二先輩の気持自体に気がつきもしないから「仕方ない」の一言で済ませるし・・・。
「じゃ、言うけど。僕はNO2の地位のままでいたいと思ってる。
コレだけ言えば今日の僕が何を言いたいのか、解るよね?手塚...」
さっきよりも甘さの抑えられた声が部屋から漏れる。
・・・何の話?
声しか手がかりのない状態で、オレには話が見えてこない。
「耳が早いな、不二。俺に盗聴器でもつけてたのか?」
苦笑混じりの部長の声が聞こえる。
・・・不二先輩ならやりかねない・・・あとでチェックしとかないと・・・。
「やだなぁ.そんな真似しないよ。
僕、山吹中の千石君と仲良いんだ、亜久津くんに留学の話が来てるって聞いてね。しかも枠は二人分....付け加えて、昼間に手塚が放送で呼び出しされてるし。
そのうえ何時になく、視線が泳ぐ事の多い手塚がコートにいるんだもん、解るよ」
―留学?
「決まったわけじゃない...まだ...」
歯切れの悪ぃ声。
そんな声、どんな顔で出してるの。
不二先輩に隙なんか見せないでよ、部長。
「行きたいんじゃないの?アメリカに・・・」
不二先輩の声が、続いてたけど。
気にならないといえばうそになるけれど。
そこで聞きつづけられそうもなくて。
音を立てずに移動した。
部長の鈍さゆえの波乱にオレは頭を悩ませていたけれど。
それは、部長が傍にいるからの悩みで...
遠く離れてしまう可能性なんて、今はまだ要らないと。
そんなこと考えた事なんてなかったんだ・・・・・・・・・・・・・・・