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「このままでいるのがいいのよ」  2004年04月07日(水)


春の表参道。ケヤキ路を歩く。


ビブレの跡地のファッションビルエスキス。
3Fにある薄暗いカフェ。いつも人が少ない。
だから待ち合わせには最適の場所。



「調子はどう?」



久美江さん
がわたしに聞く。



「イイです」
と応える。


カラダが軽い。ほんとに軽い。
動物性たんぱく質を摂らなくなってそろそろ3ヶ月。
この食事療法はマクロビオティックと言うらしい。



「最近は、肉のかたまりが死骸に見えてきました」



直接的に遠慮なく言うわたし。呆れ顔の彼女。



それは本当の事。あれは死骸。
人間はそれを食べる。



食事がストイックになったせいなのか、考え方がおかしいのか
これからどうやって生きていけばいいのか判らない。
子供もいないし仕事もしていない。
これから何をして生きていけばいいのだろうか・・・



「このままでいるのがいいのよ」
と彼女が優しく微笑む。



彼女は、大学を卒業したけどすぐ結婚してしまい
仕事をしたことがないし子供もいない。



このままでいるのが一番難しいんだから
現状を維持しないさいと念を押すように言う彼女。



「出ましょう」
と彼女の一言で席を立つ。



通りはパステルカラーで装飾されたショップばかり。
ブーツを脱ぎミュールで歩く女の子たち。


多彩な光体のようにまばゆい春の午後なのに
暖かい午後なのに、本当のことなんか考えて
バカみたいなわたし。


真実や本当のことというのは
温かいものではない。寒いものだ。


だからそういうことは・・・
迷信や嘘という衣を着せないと寒気をしのげないんだった。







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