2006年05月21日(日) |
期待を裏切るよれよれ男 |
『ナイロビの蜂』原作を読んだ。
結末について最初に抱いた感想を言うと 「えええええええ!?そんな・・・」 であった。 期待していた結果ではなく、納得がいかなかった。
しかし時間をおいて考えてみると、どうも私の認識が間違っていたようだ。
『ナイロビの蜂』は、サスペンスではなくて完全なるラブストーリーである。 一見、あらすじとしては妻の遺志を引き継いだ正義の人・ジャスティンが巨悪を暴くべく奮闘するかに見える。 だが、彼を動かすのは正義ではない。 原動力は、妻への愛情と失いかけて取り戻した信頼。 それだけである。
ジャスティンは八面六臂に動き回るヒーローではない。 颯爽としたエリート然としているのは冒頭の一瞬。 その後、一度はヨレヨレのボロボロになり、様々な局面を経て次第に悟りを開いたかの如く透明な境地へと向かっていく。 (中盤のヨレヨレっぷりが、ダメ中年好きとしては魅力的といえないこともない)
ジョン・ル・カレ→陰謀サスペンスと、短絡的に思い込んで読んでいたので、終始違和感を感じてしまった。 ル・カレファンの間では評価の高い本ではないのだが、その原因は私と同じ誤解を持ちつつ読んだ人が多かったということだろう。 スパイ小説の大家の本だということは忘れて、深い愛情物語だと思って読めば素直に感動できる。
これから映画を観に行かれる方、小説を読まれる方は清らかなるラブストーリーをお楽しみ下さい。
『ナイロビの蜂(上)』
『ナイロビの蜂(下)』
小悦を読むにあたって、英国人の階級意識について知っておくと読みやすい。 あとは、アフリカの地図を傍らにおくべし。 『ミドル・クラス』
『階級にとりつかれた人びと』
この話が好きな人は↓お勧めかも。 なんかラストシーンが似てるかな。 こっちの方が希望に満ちているけど。 『刑事たちの夏』
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