2005年01月28日(金) |
沢崎シリーズに見る社会 |
先日,某巨大掲示板で沢崎シリーズのスレを発見して以来,沢崎熱が燃え上がってしまったため 『そして夜は蘇る』『私が殺した少女』 を再読中.
この作品はタイムスパンが長い.
一作目『そして夜〜』の作中時間が恐らく1984〜85年. ヤクザ・橋爪がカラオケで『ワインレッドの心』を歌って 「クラブで歌うと若い娘にもてる」 と言っていることから判断. (この曲のシングル発売が1984年11月下旬)
その次の『私が〜』は,↑の作中の事件が 「2,3年前のあの事件」 だという表現があるので1986〜1988年.
次の『さらば長き眠り』では 沢崎の元パートナー・渡辺の起こした事件の経過時間が,『そして〜』では「5年前」となっていたのが「13年前」になっていたので,1992〜93年.
およそ10年間にこの3作しか無い(同シリーズの短編集は出た). しかも作中時間は概ねリアルタイムで流れているので,主人公はもはや中年期の終わりすら迎えようとしている.
これだけ時間が経てば,社会風俗も変わろうかというものである. それをなにより表しているのは,「電話」.
一作目では,ある大企業の社長の車に車載電話が出てくるものの,もちろん固定電話と公衆電話しか出てこない.
二作目でテレカ登場. 10円玉があっても電話がかけられないと沢崎ぼやく場面があるので,どうもテレカ式電話が普及し始めた時期らしい.
三作目で沢崎もようやくテレカを手にしている.
こうなると気になるのが携帯を持つか否かであるが,最新作で案外あっさりプリペイド携帯を手にしている. テレカ電話に反感を持ったくらいの男なので,当然自発的に持ったのではない. 案の定使い方が判らない・・・. ひょっとして次回作ではついにネットの世界に足を踏み入れるのだろうか. ダイヤルアップだったりして.
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