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FILL-CREATIVE
[フィルクリエイティヴ]掌編創作物
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恋がしたい、出逢いがないと相手は言った。何故?マサキは問いかける。
『恋ができない?そんなのはよほどのナルシストか不感症のいずれかだ。 出逢いがない?そんなのは想うための作業をたださぼっているだけだろう。
感じるものに素直でいればいい。 自分が好きなものに、真摯に正直に関わり続けていればいい。
恋をするなんて、それくらい単純で簡単なことよ。
自分の心の壁を取り除いて広げればいい。 来るものを拒まない、出すものを押さえない。 それならどんな不感症な女だって心震わすものに遭遇するだろうから。
異性を求めているのなら、そこに出向きさえすればいい。 今の時代、出逢いの場所など掃いて捨てるほどある。 出逢い系だって、合コンだって、パーティだってね。 街に繰り出せば、チャンスはどこにでも転がっているのだから。
早いとこ、その自衛だけのプライドなど捨ててしまうことよ。 感受性のアンテナを張って、チャンスの到来を万全にしておくためには。』
マサキが唯一持って生まれた才能を誇るとするなら、恋をする能力だと即座に答えるだろう。いつだって、胸熱く焦がす想いをマサキは決して怠らない。もしかしたらそれが、マサキの行動力のすべてであるかのごとく。
人一倍 長けた感性で、人一倍 多くを感じ取り、人一倍 痛みに暮れ、人一倍 涙に濡れながら、恋をいそしむ。
マサキはそんな女だった。
マニッシュなスタイルをしてラッキーストライクをふかす。タバコを吸う女は僕は好きではない。でも彼女のそれは華奢な女っぽさを匂わせていて嫌味なく見えた。
それまで一緒だったマサキの連れなら、さっき顔を真っ赤にして店を出ていった。あそこまで痛く皮肉られれば普通なら平常ではいられないだろう。
その後の彼女と言えば、凛として熱く激しく青い炎を立ててそこにいた。いや、青いというよりも透明。高温に透き通った純度の高い炎。ただひたすら燃え続ける強いエネルギー。それは怒りの炎だったのか。哀しみの激しさだったのか。
涙がこぼれ落ちてマサキを感じた時、僕の右手は彼女の背中をさすった。 想像を裏切るように、背骨のラインは柔らかく心地よかった。女の体を思い知り、その熱で心を透かして想いは溢れ出す。僕は感覚から空想を重ねて俗物的になりたいと願う。
シーツにくるまって熱をわけあう悦びはいつだって時を怠惰に彩り、上等にする。きっとこの女を僕は抱くだろう。睦言に変換させる熱の共有。ただ、触れているだけだというのに。
「ありがとう」 2杯目のジントニックを飲み干す頃、マサキは礼を言って席を立った。
僕は小さく会釈して彼女を見送って平静を除外する。コースターの裏書されたアドレスさえも無粋な小道具だったから。
青い炎は恋におちる合図。透明な熱は想う心の戯れ。マサキは僕に恋におちた。そう、彼女が思った通りに。
刺激の赴くままに… 2002.4.21 FILL 書き下ろし
収納場所:2002年04月25日(木)
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フィル/ フロム・ジ・イノセント・ラブレター
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