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FILL-CREATIVE
[フィルクリエイティヴ]掌編創作物
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その傷みが私に、目覚めた事実をやっと体に知らせた。
だから私は街を歩く。 その光は、普段よりも数倍も高いワット数で辺りを照らしていたし、 緩やかな風は、躍動をピリつかせながら肌に絡んですり抜けてゆく。
そこは街である前、私には何に映っていたのだろう。 コンクリートに囲まれた無機質な空間でしかなかった。
真っ暗な宇宙のように、実態のない闇に浮遊するwebの世界。 無限に広がる光の届かない暗黒の世界と誰が言ったのだろう。
耳を澄ませば、人の棲む息使いが聞こえてくる。 躍動に地面がたじろんでいるのが伝わるだろう。 そこは、期待と希望に満ちる人のうごめく世界。
空想は人の心に希望を灯し、明日への道しるべを記す。
人はただ一歩を踏みだせばいい。 その勇気をきっと出逢いは支えているから。
冬眠から覚めた大熊が眼をしごいて太陽にふりかざしているように、 17歳を迎えた人形姫が海上に顔を出しその明るさに歓喜するように、 触れ合う外気を喜ぼう。もう、そこは現実であると知れたのならば。
たどたどしい千鳥足だったとしても、近づいた距離を確かめるために、 私は、暁と会う免罪符を手にして、地方都市に向う列車に乗り込んだ。
目的地はちょうど桜が満開の季節だと車掌が告げ、 列車は街を後にしてゆっくりと動き出すのだった。
※初出2002.4.5「さと本」より「あなたと出逢った空間に」を加筆。
収納場所:2002年03月16日(土)
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フィル/ フロム・ジ・イノセント・ラブレター
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