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[フィルクリエイティヴ]掌編創作物
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8月24日 くんちゃんへ
いよいよ明日が結婚記念日だ。くんちゃん。
ちょっと遠出して、隣町の神社のところまで歩いた朝それはみつかった。
きみは覚えているかな?
あの路地を抜けたところに古ぼけた骨董品屋があったのを。
今にも崩れそうな軒下で、偏屈そうな店主がひとり座っている店だ。
ひっそりとその足下に、かごに入って置かれてあったよ。
まるで、ずっとそこで私を待っていたかのように。
『結婚30周年のご夫婦に、素直な妖精の杖』
札の文字は、明らかに私だけのためにそこで主張していた。
さるすべりのようなつるつるな木片。
粗くけずった模様が入ってるだけの長さ50cmぐらいの杖。
これが妖精の杖なのか?
「記念日に、望みのものを一つずつ、夫婦で告げあいなさい」
店主は私にそう言って、その杖を差し出す。
私は、ポケットにあった数枚の千円札をわしづかみのまま渡した。
そのまま路地を引き返し、うっそうとした神社の森を抜け出してきたよ。
隣町の見なれない風景は、異次元にタイムスリップさせたようだった。
遠い少年の頃、夏休みに歩いた探検道のように。
くんちゃん、きみの願いごとは世界一周旅行にでもするか?
私はもう決めた。君を喜ばしてあげられればいいのだが。
正治より
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収納場所:2001年08月16日(木)