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[フィルクリエイティヴ]掌編創作物
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初 出:夏の日の妖精(8)
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9月7日 素直な妖精さんへ えみこより
さすがにここのところ、朝晩はひんやりしてきました。
あの猛威を振るった酷暑もやっと勢力を弱めてきたのですね。
君子さんも、正治さんも天に召されましたよ。
いくら探しても妖精の杖、もうどこにもありません。
妖精さん、持っていってしまったのね。
隣町も探しに歩いたけれど、その骨董品屋さえも見つけられませんでした。
私が病院についた時、二人は静かに寄り添い深い眠りについた後でした。
父は母の胸の上で右手を握りそれを包むように母の左手が添えられていました。
自分の意志で指を曲げることさえできなかった母が、父の手を握り返していたのです。
妖精さん、くんちゃんの願いごとはなんだったのですか?
若返って新しい人生を始めることよりも、病気が治って元気になることよりも、
正治さんと一緒に逝ってしまった、君子さん。
私も、結婚して30年が過ぎたらその答えがわかるでしょうか。
その時、妖精は私の前にも現れるのかもしれません。
願いを叶えるために、杖を持って。
素直すぎる、いたずらな運命の杖をね……。
END
※初出 2001.9.26「さと本」より一部加筆
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収納場所:2001年08月13日(月)