++ Wasabia ♧ japonica ++

平凡で退屈な日常の中にこそ、目を向けたい一瞬がある。
大事なことは、いつもその中にしかないのだから。

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◆ 2003年02月01日(土)
デフレと住宅値下がり
会社の事務所がある土地は半分がおやじの土地で
半分が賃貸だ。

ひい爺ちゃんから長く住むこの土地は
地代がとても安いのだが、
ここら一体の土地を持つ地主は
土地を売らないことで有名。

一時は儲かっていたこの商売。
もちろん土地を購入した方が商売はとてもやりやすいので
売ってくれるに越したことはないが、
悲しいかな時代は変わる。

この不景気のさなか、近くの商店街はさびれ、
店舗は次々閉鎖。
高齢化が進み、この地域全体がどことなく活気がない。

土地の値段は下落。
買うよりも賃貸で支払う金額の方が圧倒的に有利に。

そんななか「土地を買ってくれないか」と地主の方から
やってきたのは暮れの忙しい時期だった。

地主の本業は外科医。かなりでかいビルを所有し
ここら辺では「腕は確か」とのなかなかの評判の医者で
みな怪我をすると必ずそこの病院を訪れる。

中学生の悪たれどもが怪我をすると学校からそこへ送られるほど、
地域密着型で、もちろんうちの家族もみな1回はその病院で
世話になっているのだ。

同じ地域で持ちつ持たれつやっていた地主と借主だが、
もう数年前ならのった話も、土地購入へのメリットは
ほとんどないのが現状。
ここら辺の地域全体の人がみな一様に話を断っていたらしい。
当然うちも断った。


ところが、新しい年を迎えてほどなくして、
その病院が経営不振により閉鎖されることになったとの話が
舞い込んだ。

肝心なここらへん一体の土地は測量も行なわないまま、
二束三文で不動産屋に買収されたそうだ。

権利関係が複雑に絡むこの土地。
裁判も何度となく経験しているのだが、
また新たな嵐が巻き込むのではないかと思うと、
なかなか頭の痛いことだ。


話は変わるが。

不動産の値段は2年後には1000万は下がるといわれている時代。
一般庶民の人達の買いやすい値段に下がるのは、結構なことだが、
果たして本当にいいことだけなのか。

建築単価の値下がりはこれ以上下がれば、良いものは期待できないと
見て良いだろう。出来るだけ多くの仕事をこなさなければ
まともな日当にならない今の単価。

もう今では腕のいい大工ならプライドが邪魔して
そんな仕事には手を出さなくなっている。
要するに引退してしまうのだ。

そうなれば駆け出しの若い大工が工期に追いかけられながら
中途半端でも早く走るように納めてしまうような仕事の仕方で
あげてしまう。

肝心な構造の部分で質の中途半端な住宅。
設備ばかり絢爛豪華。
素人の消費者を誤魔化す細工ばかりで中身を伴わない住宅は
これからは増えていくだろう。


デフレスパイラルは、決して人事ではないのだ。
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