++ Wasabia ♧ japonica ++

平凡で退屈な日常の中にこそ、目を向けたい一瞬がある。
大事なことは、いつもその中にしかないのだから。

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◆ 2002年09月21日(土)
国籍を乗り越えて
彼がうちの会社に面接に来たときは23才。
未だ少年の面立ちが消えない、笑顔のかわいらしい青年だった。


中国国籍を持っている彼はほんの少しだけ
日本語がおぼつかない。

私もだんさんも彼の190cm越える身長と体躯のでかさに惚れて、
OKを出したのだが、社長である私の父が拒否。

この年代の人たちには根強い国籍差別があるようだ。
信用が出来ないという、根拠も何もない一言で
突き放されてしまった。

結局彼とは賃金の折り合いが付かず、
また、その時は経験者を募集していたこともあって、
経験のない彼は、条件に合わず入社には至らなかった。



その彼が、しばらくして再び会社の門を叩くことになる。
こちらが最初提示していた見習いの賃金でも良いので
働かせて欲しいと頭を下げてきたのだ。

その頃には人員も足りていて、人あまり。
とても余剰の人員を抱えるほどの余裕はなかったのだが、
彼の真剣な眼差しを受けて、再度社長へ話を持っていった。

彼と社長と二人で面接し、そして彼は偏見を乗り越え
うちの会社へ入社。

最初の頃こそ、他の若い衆と言葉の違いで揉めたり
大工連中に「生意気だ」と反感を買ったりして、
疎外感があった。
苦難の連続ではあったが、彼には反骨精神がある。

教えてもらわなければ、盗むまで。

彼はそれら全て乗り越え、技術は未だ未熟ながらも、
今では立派に上の信頼を勝ち得ている。


もちろん社長からの信頼も厚い。
あの偏見に凝り固まった父が、彼だけは別格に扱うのだ。



彼には若い日本人にはない、何とも形容のしがたい
逆境に負けない不屈の精神と向上心を感じる。

協調性のない面はいささか失点ではあるが、
それを補う仕事へのパワーを感じるのだ。


いつの日か世代交代が進み、年輩の方々の根拠のない
偏見がなくなり、
国籍の違う人々の長所を見習い、いい具合にまじあう
時代が来れば良いと感じる。


それには、やはり日本人の努力が必要だろうが。
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