やっと雨の木曜日です。 書きたかったのー。 コレが一番書きたかったのー。 38話ネタ話、の続き。 以下反転。 「おはようございます」 「失礼します」 サイとミリアリアがブリッジに入った時、マリューひとりだけが艦長席に座っていた。 「おはようございます。あなたたちは今日からCICじゃなくて私の後ろね。よろしくお願いするわ」 そう応えるマリューは微笑みながら何か物思いをしているようだった。 これから戦争だと言うのにとても柔らかな笑みに、サイとミリアリアもつられるように笑む。 「艦長、何かいいことでもあったんですか?」 「ホント、とってもステキに笑ってらっしゃいますよ?」 マリューが「そう?」と答えながらクスリと笑う。 ひとつ、深く息を吐いて、目を閉じて、艦長席に深く沈む。 「ミリアリア。あのね」 年上の上官に、友人のように呼ばれて、ミリアリアが通信席のキーを叩く手を止める。 「私、もう二度と恋なんてしないって決めていたの。ずっと軍にいたし、相手は軍人の男ばかりだし。軍人なんて最低だしね」 ミリアリアの席から、マリューの顔は見えない。でも声音は明るい。 もう二度と、ということは、その前のことを指している。 思わぬ告白に、サイもミリアリアも驚いて顔を見合わせる。 「特に、パイロットなんて、一番先に消えてゆくのよ」 ミリアリアの胸に、強く響く。 消えてしまった、大切な人の笑顔。鮮やかに甦るのに、そこにいない人。 急に締め付けられるような切なさも甦る。 「それなのにね。また恋をしちゃったみたいなの。また、なのよ。止めておけばいいのにね」 自らを揶揄するように、マリューが小さく笑う。 その相手が誰なのか、聞くまでも無いことだろう。この艦で『また』に当てはまる人物で、マリューが精神的な支えにしているのは1人しかいない。 それでも、無粋だなと思いながらサイが掠れる声で聞く。 「フラガ少佐…ですよね」 はっきりと人物名を出されて、マリューのクスクス笑いが止まる。 「…ええ、そう。そうなの。まるで、夢みたいなの」 トールが今、夢の中ででも出会えたら、決して手を放さないのに。 ミリアリアの失くした夢が、今、マリューの手の中にある。 手放さないで欲しい。 そう言いたいのに。 マリューは出撃を命じる艦長で、その想い人は命懸けで戦う人なのだ。 「いつまで、夢を見せてくれるのかしら」 「いつまでも、ですよ」 根拠は無くても、これは絶対だ。そうミリアリアが言い切る。 マリューが後ろを振り返る。 ミリアリアを見つめる瞳は静かに凪いでいる。 「夢が醒めたら?」 「醒めません。そんなこと、私が許さないですよ、艦長!」 立ち上がって叱る口調のミリアリアに、救われたようにマリューが笑いサイに視線を送る。 サイも、大丈夫ですよ、という風に頷く。 「ありがとう。2人とも」 穏やかに言われて、サイは小さく「いえ」と答える。 ミリアリアはまだ少し怒っている顔で小さくつぶやく。 「フラガ少佐にも、言っちゃいますからね。艦長のこと、ちゃんと責任取ってくださいって!」 end 何も、言うことなしです。 |