un capodoglio d'avorio
2003年04月17日(木) |
マイケル・ムーア「アホでマヌケなアメリカ白人」 |
原題は"STUPID WHITE MEN"。 昨年の発行時に圧力がかかって、発禁寸前まで追い込まれつつ、 しかしムーア氏が敢然と発行。 主要メディアに無視し続けられたにもかかわらず、 発売と同時にベストセラーリストの1位になり、 現在もリストに居座り続けている作品、日本でも訳書がロングセラー。 なぜに圧力がかかったか? ブッシュ大統領を、名指しで、けちょんけちょんにこき下ろしているからだ。
「ボーリングフォーコロンバイン」を見た後だったので予想してたけれど、 想像以上にあからさまで赤裸々な告発本である。 ニュースでよく見かける具体名が、ポンポン出てきて刺激的なことこの上なし。 内容は多岐にわたりつつも、メインターゲットは現某大統領。 「ユーモア」という才能が、「暴力」に対抗する有力な武器であることを、 ストレートに読者に教えてくれる。 特に「あの」大統領選挙での欺瞞。 ゴアに対して劣勢に立たされたブッシュ陣営の組織的犯罪。 自分が大統領の椅子を手に入れるために民主主義を根本から覆したその人が、 「中東に民主主義を広める」とのたまう厚顔さは、 滑稽に過ぎて、もはや笑うしかない。 「ボーリングフォーコロンバイン」がオスカーを獲ったとき、 ムーア氏は授賞式の壇上で「図に乗るな、ブッシュよ!」と叫んだ。 その彼の真意は、このエッセイを読めばすべて理解できる。 何から何まで、嘘で固めてきたのが、あの大統領なのだ。
卓越した取材力により提示される客観的なデータ。 それをわかりやすくかつ面白く伝えるユーモアの才能。 この二つがそろうだけで、個人がここまでのメッセージを発信できるのだ。 どちらがかけても、いけない。 この両方がなくてはいけなかった。 知性とは、こういうことを言うのだね。 と、心底思う。
一番感動したのは、ムーア自身による「エピローグ」だった。 彼はもはや全米でも有名人であり、くだんの大統領選の時には、 ゴア陣営とその支持者から「犯罪者」扱いまでされた。 ムーア氏は徹頭徹尾、反ブッシュであったにもかかわらずだ。 そのいきさつについては、彼自身の著述を読んでもらいたい。 決して言い訳じみておらず、ちゃんと事実を知れば、 その批判は全く当たらないことがすぐにわかる。 彼は自ら真理と恃むことに拠って、これまでも行動し続けてきた。 一点の曇りもなく、自分の身体を張って生きてきた。 「エピローグ」最後の一節。
俺は、ただ「生きている」だけという状態にはヘドが出る。 自分が前線に出もせずに泣き言ばかり言う奴にはヘドが出る。 恐怖に立ち向かえ。 人生の目的は、ただ漫然と生きていくことだけだなんて言うな。 「ただ生きているだけ」というのは、臆病者の生き様だ。 あなたには、市民として生きる権利がある。 あなたには、より良く生きる権利があるんだから (マイケル・ムーア「アホでマヌケなアメリカ白人」)。
・・・泣けるね。 アメリカという国家はきらいだけれど、アメリカ人を嫌いになるのは、 もうすこし、先延ばしにすべきなのかも知れない。
最後の一文、つかこうへいならばこう言うだろう。
ひとは幸せになるために生まれてきたのです
手塚治虫ならばこう書くだろう。
行くぞ!!
・・・泣ける。 でも泣く前にいまは、自分を顧みなくちゃだ。 ムーア氏のユーモア、アトムの100万馬力、どかには何があるのだろう。 そして、その「何か」をどう使っていくのだろう。 いまは、この日記を書いているだけだけど。
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