ねろえび日記
目次へ過去へ未来へ


2006年06月13日(火)  花よりもなほ

花よりもなほ
原案・脚本・監督:是枝裕和
出演:岡田准一、宮沢りえ、古田新太、香川照之、木村祐一、寺島 進、
   加瀬 亮、浅野忠信、原田芳雄、遠藤憲一 他
2006 日本

紹介:時は元禄15年天下太平の世、青木宗左衛門は父の仇を討つべく信州松本より江戸に出て早3年。実は宗左は剣の腕はからっきしのへっぴり侍、ビンボー長屋で読み書きそろばんの寺子屋を開く始末。
彼を取り巻く長屋のけったいな住人たちとお向かいの美しい未亡人とその息子と、あれやこれやの日常、大した事件も起こりませぬが。にっくき仇は見つけてしまったが。
仇討ちするのか、しないのか。店子たちは長屋を追い出されてしまうのか。ひょんなことから未亡人の秘密を知ってしまったよ。ほんでもって、くそはもちにかわるのか。あらら、赤穂浪士の仇討ちとも絡み合ったりして、事態は思わぬ方向に、宗左、一世一代の大博打。


よかった。
見終わってほっこり気持ちがよくなる映画だった。よく出来た映画。
笑ったり、せつなかったり、ほっとしたり。
登場人物の中の人(役者)も外の人(人物設定)も、主役も傍役も、愛らしい人間ばかり。
脚本も上手かったしねー。
心にびしびし響くような台詞がいっぱいあった。

どんだけひとりひとりが素敵だったかというと、チラシを紹介します。
「仇討ちだよ、全員集合!」と書いたフキダシがあって、周囲に登場人物全員の小さな全身写真が散らばっている。横に「へっぴり・青木宗左衛門」「そそのかし・貞四郎」とか短いキャッチフレーズと名前つき。
本編を観る前は、センスいいな可愛いなくらいに思っていたのだが、観終わってから眺めるといちいち納得で100倍楽しめる。そんな風に全員が愛すべきキャラクターでした。
ちなみに、パンフレットには全員掲載されていない、残念。


オカダくんは繊細かつ大画面にも映えるいい演技をしていた。いい役者さんだな。
ナガセくんは器のデカイ役者でオカダくんは懐の深い役者、前から何となくそういうイメージだったんだけど、増々納得。
顔は綺麗だけど、チビで頭でっかちゆえ全身のスタイルはイマイチ(スンシンは全身でもカッコよかったのに)、男前なんだかそうでないんだか、トドメは破壊的に月代が似合わねーの、でこっぱちだから、そのあたりのとほほ加減も役に合っていたような。いい塩梅で妙。
いや、男前だよ、格好悪いことをちゃんとカッコよく見せられるところが。


まずは貧乏長屋のオープンセットがよくできているのに感心。
衣装もどれもこれもええ感じに小汚くて。
貞四郎(古田新太)だけはお洒落なカブキ者っぽい着物。モエ。
ロケーションも綺麗な風景だった(結構地元)


オカダくん、子どもとのシーンが優しい雰囲気で特によかった。感動的なことをやっているわけではなくてさりげない場面なのに心が震える。声とか表情とか手のつなぎ方とか、そりゃもー。
その子役、進之助も吉坊も、上手で自然で可愛らしかったなー。

お祭りで仇一家とすれ違うシーンもとてもよかった。お面オカダは凄みありありの男前。
あとね、父が残してくれたモノは憎しみだけじゃなくて、囲碁を教えてもらっていたと気がついたシーン。

風呂に入ったり葛餅食ったり、オジーとぶっさんだーと一瞬舞い上がった。


長屋の住人、楽しすぎる。
胡散臭い古田新太も傑作だったし、キムキム兄やんの孫三郎、頭のヨワイ人に見えるけど、物事を本質でとらえている、のか?

桜は来年もまた咲けるとわかっているから散ることができるんじゃねーの(孫)
桜が散るのはまた来年も咲くため(おさえ)
似てるようで、前者の言い方のほうが好き。そうだよ、保証があるから動けるんだ、世の中そんなもんだ。

香川照之サン、いい役者さんです。平野のダメダメ加減を見事に体現してて凄い。
腹切りシーン、宗左ひとりがオロオロしてるけど、慣れている貞四郎は血で畳よごすな、土間でしろとか容赦なくて笑える。

加瀬 亮くんもなかなかよかったけど(役がいい役なのね)オダギリくんにも合いそうだと思ってしまいました。
おりょうさんに言った「子供産んでしわくちゃになるまで見ていていいか」にはうるうる。

宗左のおじさんも、犬くんも、
あー、いっぱいありすぎて書くのが面倒くさくなってきた。


宗左自身とおさえさん(宮沢りえ)の仇討ちが、それに対する彼らの気持ちが、納まるところにすとんと納まって、噫、よかったなあと。
ま、赤穂浪士さんたちのほうは、しょーがないつーか、あんなもんか。


目次へ過去へ未来へ
のり |MAIL