天気のイイ夜には月が出る。 暗闇の中にポツンと浮かぶ月は遠い過去のような、儚い未来のようにも思える。
ベランダに出て、ビールを飲む。 月との会話が始まる。
「また一緒に飲みましょうよ」 と問うと、
「私とばかり飲んでばかりいると雲が嫉妬しますので…」
「じゃあ、雲も呼びましょうよ」
「そうですね、私は雲に隠されてしまうかもしれまんが、また御一緒しましょう」
「お願いしますよ、雲に私の事紹介しておいてくれますか?」
「わかりました。しかし、どうも雲は嫉妬深いので貴方の事をどう思うか…」
「心配しないでくださいよ!私は何もしませんから」
「そうではないのです。貴方の事を気に入ってしまったら、これから私の出番がなくなってしまう…曇りばかりの夜になってしまいますよ!!!」
「それは困りますね、七夕も天体観測もできなくなってしまうじゃないですか!」
「だから…あまり雲とは関わらないほうが…」
「そうすると…どちらとも関われなくなってしまうじゃないですか!」
「今日で貴方とこうしてお酒を飲むのも最後です、残念ですが…」
「分かりました。今日は朝までゆっくり飲みましょう」
次の日はしっかりベッドの上で起きたのだが、夜になると大雨になった。 きっと月が悲しんでいるのだろうと思いながら、晩酌を1人で交わした。
|