白い部屋の白い壁を、全て黒くしたいと其奴は考えた。 太陽の光だけで生きていこうと思った。 それだけが其奴にとって必要なモノだった。 太陽と共に目覚め、 月と共に眠る。 先ず、煙草を取り出した。何年掛かるか分からないけど、 『ヤニ』で部屋を黒くしようと火をつけた。 けれど、いつしか其奴は気付いた。 これはキリがないと・・・。そして喉も痛かった。 遂に声が出なくなった。吸いすぎによる喉の酷使によって。 『ヤニ』で黒くするのは諦めてしまった。 手っ取り早く黒いペンキを買ってきた。 そして白い部屋にぶちまけた。其奴の人生のリセットのためと暗い過去と一緒に。 敢えて黒くしてみた。それが未来へ手がかりとなるに違いない!と其奴は強く思った。 全てが黒に染まった。 満足だった。全てが黒くなった時、彼は思わず拳を空に掲げた。黒い空に。 争いに勝利した勇者のような顔をして。 しかし、彼はすぐに外に出た。眩しくて、空に向け涙を流した。
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