午後九時頃、 夜風に誘われてふと散歩してみた。 蒸し暑いが通りすがる風のおかげで少し和らぐ。
一戸建ての家を通ったとき、子供の笑い声が聞こえた。 それは幸せに満ちていて、 まるで週末の楽しい、家族との団欒。 それが無性に羨ましかった。 私にも過去に存在した時間かもしれない。 しかし、過去なのだ。 居間に集まって皆で楽しい会話。 幸せにあふれるひととき。
私は違う幸せを手に入れた。 それだけで今はいい。
タバコを吸いながら散歩した。 煙は夜空へと消えていった。 街灯は少し先の未来を映し、明日へと照らしてくれる気がした。 確実に歩き出していた。
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