寒さに耐えることができずに、思わずポケットに手を入れ襟を立てた。空はどんよりと重く、今にも雨が降り出しそう。まるで私の心を映したよう。それとは対称に空を群れ飛ぶ鳥は自由でうらやましい。待っても、待っても来て欲しい人は来ないで、ただ寂しく汽笛だけが鳴り響く。昔の人を思いだしては少し涙を浮かべて『昔のことよ』と、自分に言い聞かせても心に嘘は付けずに…。連絡船が着く港。