降り出しそうな雨は、僕の気分を嫌でも曇らせた。
夏の少し前の気候というものは僕の体質には合わないみたいだ。
それでも部屋の中にいるよりは外へ出て何か刺激が欲しくなる。
夏前だから。
いく場所は何処でもいい、混雑する新宿でも、
誰もいなそうな昼下がりの公園だろうが何処でも何らかの刺激は僕を包む。
つまり夏前だから。
結局のところ誰かを思い出す。
昨日会った友人だったりお世話になった先生だったり、
最近フラレタ恋人だったり、
初恋の人だったり。
誰かを思い出して、僕という存在を確かめる。
自己という存在は、他人によって証明される。もし僕の生まれた当時の写真を見せられたところ、僕は僕とは分からない。解るのはその写真を撮った僕の両親で、僕ではない。
何時の間にかここまで来てしまった事を今更後悔したところで僕という存在自体否定は出来ない。
クリアできないゲームはいくつか有るけど、自分という壁にはもたれたくない。いつかクリアできるはずの自分を投げ出さないと…………誓った夏前の夕暮れ。
もうすぐ夏本番。人々は日に日にTシャツに着替えて町へと繰り出す。何もない2001年の夏前の景色、もうすぐ雨が降ると天気予報士は声高にそう伝えた。
いつもどうり僕は何かを待って、何かを手にし、何かを手放す。
そして雨が降り、耳を澄まして雨音を聴いたら、虹を待つ事にしよう。
クリアできないのは僕の存在と昨日のスケジュール。
あとがき→これは昨年に書いたものでありまして、読み返すのは少し、恥ずかしいです。文才のほうは全く進歩を見せずにむしろ下手になってしまったかのようにも思えます。
楽しんで読んでもらえれば是幸い。
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