月に1度だけでも、二人きりのデートをしようね、と言う「二人の決まり」を作ったのは、栄だ。
栄は、決まりをたくさん作ってくれた。
他には、週に1回は家事を休む日で、5人で外食、とか。
寝るときは、必ず(喧嘩したとしても)くっついて眠る、とか。
この間。
子供達が実家へ遊びに行っている間、二人で電車でお出かけをしてきた。
久しぶりの二人きりのデート。
東京タワーが間近に見える、新しく出来たホテルのバーに。
私たちは。
東京タワーが、今思えば初デートだった。
まだ、夏になる前だった。
私の気持ちが、ものすごく不安定な時期だった。
それ以来、何度も来たっけ。
二人で結構飲んで。
帰りの電車の中では、ホッとレモンを片手に、私は立ちながら、うとうと。
栄が一生懸命、私が眠れるように寄り掛からせてくれて。
暖かくて、気持ちよくて、私は熟睡しそうになる。
私のほうが身長が高いのに。
いつも高めの靴を履くから、結構身長差が出来てしまう。
でも、立って寄りかかるときに、ちょうど頭を傾けると、栄の肩がいい枕変わりになって。
「寝ちゃっていいんだよ」
なんて、電車の中なのに、背中をとんとんされるから。
本当に寝ちゃうところだったよ。
私の大好きな、栄の声を、聞きながら。
このまま、電車の中で本当に寝ちゃってもいいな。なんて思う。
栄は。
いつだって、暖かい。
だから、そばにくっついていると、本当に気持ちいい。
誰かと抱き合ったり、くっついているだけで、こんなに気持ちよくなれるなんて、知らなかった。
私が、ものすごく安心する、大好きな時間。
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