夜の電話。
「結婚したらさー」
いつものが、始まった。
って、思った。
連日朝早くからの勤務のあたしは。
疲れてて、イライラしてた。
お酒も、飲んでた。
気が大きくなってたと思う。
「ねぇ。あたし、全く結婚するつもりないんだけど」
かなり、嫌な言い方になった、と思う。
自分でも、分かってた。
「何でそんな言い方するのー(笑)」
最初は、あいつも笑いながら、あたしをなだめようとした。
そう言うのにさえ、イラついた。
「したくないから」
「だから、なんでー」
「一度失敗してると、またしたいなんて思えないから」
「俺となら平気って思えない?」
「思えない。バツニになりたくないんだよ」
少し間があって。
「なにそれ」
って返って来た。
でも、本音。
バツニなんかなりたくない。
本当に、結婚してよかった、と思いたい。
一度結婚に失敗しているくせに、まだまだ、あたしは夢を見る。
楽しい食卓。
思いやりのある会話。
笑顔の毎日。
そんなことばっかりじゃないって、あたしは11年間も結婚生活をしてきたくせに、まだ夢を見る。
そんな生活したい。
次こそは。
「りりか。何で、また離婚するって事を前提に考えてるわけ?俺はりりかを幸せにする自信はあるし。一生一緒にいるつもりだし。同じ墓に入るんじゃないの?」
「うまくやって行けるって、今はまだ思えない。それは、Hだからとかじゃなくて、誰とでもそう。あたしが変わる事が先なのかな」
「りりかは、今のまんまでいいんだよ。何を変わるの?」
「分からないけど。あたしは、上手に結婚生活をやっていける自信がないの」
言ってる事が、分からないな。
って、自分でも思う。
「結婚は、俺はした事ないから分からないけど。でも、いつも一緒にいたいって、思ってくれてるよね?」
「うん」
「なら、いつも一緒にいようよ。それで、喧嘩もすれば、いちゃいちゃするときもあったり。俺はずっと今のまま、りりかを大事にしたい気持ちは変わらないから」
「ホントに?」
あいつは、さっきまで怒った口調だったのに。
笑いながら、言う。
「当たり前じゃん。俺だよ?1年以上一緒にいても、俺はりりかが好きで好きで仕方なくて、考えてニヤニヤしちゃう俺だよ?」
「りりかみたいなわがままで、何でも勘ぐって、ネガティブな子、俺しか、受け止められないでしょ(笑)」
あたしは、ちょっと、吹き出す。
「なにそれ。最低じゃん(笑)」
「・・・焦らないでいいよ。ごめんね、最近そう言う話ばっかりになっちゃって。ゆっくりでいいよ。一緒に、ちょっとずつ進めて行こう。俺、りりかに合わせるから」
ごめんねって、あたしだよね。
待たせて、待たせて、いっぱい待たせて。
まだまだ、再婚する勇気はない。
たくさんの、いろいろしなきゃいけない事も、あるから。
だから、もうちょっと待って欲しい。
そう言う話は、しなきゃいけない事を済ませて。
あたしが、再婚したいって思えるまで。
それまでは、あなたも不安になっちゃうよね。
いろいろと、考えちゃうよね。
でも、あたしだって不安だよ。
いろいろと、あたしだって考えるよ。
待ってて。
最終的には、あたしはあなたの所へ行くから。
何年掛かるか分からないけど。
待ってて欲しいって思うの、やっぱり、わがままだって分かってるけど。
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